2013年8月24日土曜日

小型家電リサイクル

留学から帰国して三週間。
ゼミの先輩の結婚式があったり
横浜から六本木まで冒険したり
気が付けば、
夏真っ盛り就活真っ盛りである。

というわけで、環境省のサマートライアルに参加して来た。
二日間のグループワークで僕たちが取り組んだお題は、
小型家電リサイクル。

話は少し飛ぶけれど、
皆さんは古い携帯をどうしているだろうか。
僕の場合は、タンスの中にとっておいて、
つい最近3つくらいまとめて燃えるゴミに出したところ。

しかしこの携帯、実は金をはじめレアメタルが詰まった資源なのだ。

僕たちが取り組んだのは、
ケータイやゲーム機など、
捨てられている小型家電のリサイクル促進策を考えること。

特に携帯電話リサイクルは事業者からも注目されていて、
ドコモやブックオフでは無料回収をやっているし、
北九州には古携帯を効率的にリサイクルする独自プラントをもった工場もある。
(ガイアの夜明け6月11日)

しかしながら、ケータイのリサイクル率は30%前後。
多くの古携帯は埋め立て場や中国等の海外へと消えている。

僕たち消費者の携帯を捨てるという行動を変えるには??
このことを二日間議論し、最終的には携帯端末税なるものを提案して終わった。

話は変わるけど、官庁のインターンシップは、
コンサルティングファームのそれと似たところがあると思う。

個人的に大事だと思うのは、
①問題と提案を絞って具体的に、できるだけ詰めること
②雑談力③平常心

①については、これまでのインターンや政策コンテストなどで感じてきたことだけど、
今回は特に②と③の重要性を感じた。
②と③がある人はチームや先輩からの信頼を得て物事を前に進められる。

楽しかったサマートライアル。
ここで得たことを糧に次に繋げていきたい!

2013年6月20日木曜日

キャンパスアジア・ソウル編のまとめ

◆民主主義を勝ち取った国
 韓国は民衆の運動によって独裁制を打破し民主制を勝ち取った国。現在でも政治運動が盛んで、大統領選ともなれば街に繰り出したり贔屓の候補のボランティアを買って出る学生は多い。

 一方、学生とその親の世代の価値観の断絶は大きい。例えば、開発独裁により韓国経済の礎を創ったとして、朴正煕元大統領を評価する中年層は多いが、若年層は民主化を阻害したとして、彼に批判的な者が多い。

 民主化運動が最も激しかったのはソウル大学であり、ソウル大学の裏には今も軍事警察の施設が置かれている。ソウル大学の教授からは、自分の大学の友人が民主化運動の中で死んでいった、などの話を聞くことができる。

◆ソウル大学
 ソウル大学で学べば、いかに学生が社会から大切にされているかを感じることができる。森に囲まれたキャンパス、24時間運営の図書館、山の頂から街を一望できる寮など、日本にもほとんどないようなキャンパスで一年間学ぶことができたのは本当に幸せだった。

 韓国人は子供を大切にする。子どもの塾や習い事などの教育にはとことんお金をかける。しかし、日本人の感覚では子供に「甘い」という気もする。例えば、飛行機機内で座席を蹴ったり窓を叩いたりして暴れる子供を厳しく注意しないということがあった。また、図書館で誰かが忘れた目覚まし時計が鳴り続けているのに誰もそれをとめようとしないなども。

 韓国の人々は身内や仲間は非常に大切にするが公共やエチケットのために行動しようとする考え方は薄いのかもしれない。例えば、家族のためなら喫茶店の注文列にも平気で割り込んでくる。それは日本との違いである。双方に一長一短がある気もする。日本の場合は逆に、エチケットや世間を気にしすぎるためか、ぶっ飛んだ発想や行動、社会の創造性を自己規制する風土が強いのではないか。ただ、韓国社会から民主化当時の公共のために行動するという気概が失われつつあるとすれば、それは大きな社会的損失だろう。

◆活気と格差と弁護士集団
 ソウルをあらわすキーワードの一つは活気である。カンナムや夜のホンデを訪れれば六本木や渋谷を超える猥雑性とエネルギーを見出すことができる。

 しかし、もう一方のキーワードは格差である。アジア通貨危機の折、韓国のエリートの多数が職を失った。夜、タクシーを拾い、ドライバーが英語に堪能でありぎょっとしたことがある。彼は昔はライオンズクラブのメンバーで日本に社費留学した経験もあったという。

 韓国の学生と教育を論じると、悲観的な意見を聞くことが多い。ソウル大学の学生には、財閥が経済を独占し、その子弟が潤沢な資金を背景に若いうちから海外の中学や高校に通うことを苦々しく思っている者も多い。ただ、結局は財閥の優位を崩すことはできないと考える者が多く、教育政策の可能性には悲観的な意見が多い。

 韓国ではサムスンなど、一部の財閥系企業は国際的な競争力を持っているが中小企業が弱い。例えば、パン屋といえば財閥系列のパリスバケットで、それ以外のパン屋は潰れてしまってほとんど見つけることができない。そして学生は財閥系企業もしくは外資系企業に入社するために大学入学当初から投資サークルや戦略コンサルティングサークルに入って研鑽を積む。また、有名なサークルに入るためには、難関の入サークル試験や面接を突破しなければならない。良い大学に入るかどうかが人生に与える影響も大きく、子供の頃から学習塾や英語塾に通う。住宅と子供の教育が現代の韓国人の借金をつくる二代要因だとされている。

 格差についてもうひとつ指摘できるのは都市地方間格差である。韓国のリゾートとして有名なのが済州島で、マリンスポーツや非常に美しい自然などを楽しむことができる。済州島は街の人も気立てが良く、賑わっている観光地だが、気になるのはいかがわしいお店が非常に多いということだ。都市部に産業や資金や人材が集中した結果、地方の産業は著しく衰退しているのかもしれない。済州島の市場にいくと、多数のお店があるものの、そこで売られている商品が非常に似ていることに驚かされる。

 このような格差の是正を求める集団の一つが弁護士集団である。例えば韓国の民弁というNGOは、現ソウル市長のパクウォンスンを創始者に持つ団体であり、所得の低い個人がサムスンなどに対して訴訟を提起するのを支えたり、経済民主化を促進する立法を提起するなどの活動を行っている。弁護士であり、社会起業家でもあるパクウォンスンは、ソーシャルビジネスアイディアという本を執筆したり、政策をビジネスにする方法を提案していたりして興味深い。

 僕の友人の一人も民弁のメンバーである。民弁の学生メンバーの中には弁護士や政治家を志す者も多く、民弁は次世代の韓国社会の可能性を感じさせる集団だ。

◆対中意識とドルフィンストラテジー
 韓国に留学して思ったのは、国史はその国の人々のアイデンティティーや世界認識に強い影響を与えるということだ。

 韓国の男の友人と対中認識を論じると日本人とはかなり異なっていることに驚く。日本人の学生は、過去に中国と戦って勝った歴史をもっているためか、そうやすやすとは中国に負けないという、タカ派的な気概を持つことも多いと思う。しかし、韓国人の学生が口を揃えて言うことは「中国には勝てる気がしない」ということだ。

 韓国は歴史上中国からの侵略にさらされてきた国であり、その点で日中の歴史とは異なる。また、朝鮮統一という悲願を実現させるために中国に期待する韓国の学者や若いインテリは多い。

 韓国人の友人と世界情勢の話をして印象深かったのは、「俺達は日本と清の権力争いで間違った方を選択した。中国と米国との間では正しい選択をしたい」という言葉である。最近、韓国では中米の間で賢い外交を行おうとするドルフィンストラテジーという考え方も提唱されているようだ。

 友人達が暮らす韓国の考え方を理解しつつ、更に別の友人達が暮らす中国が責任ある大国として成長を遂げるために、日韓がどのような行動をとるべきか。このことを考え、働きかけを行うのが私達がこれから成していかなければならないことの一つだと思う。

◆日中韓の学生の大局観と緻密性の比較
 ソウル大学に一年間留学し、キャンパスアジアの政策コンテストに二度出場した。その中で感じたのは、中国の学生の大局観、韓国の学生のスピード、日本の学生の緻密さである。特に中国の学生と議論すると、議論が飛んだと感じることが多い。しかし、中国の学生は常に議論のゴールは何か、本質は何かを考えていると感じる。

 日本では、細かく議論を詰めることが全てであるという考え方が支配的なのではないか。しかし現実には、確かに非常に細かくみるとその点は正しいが、実際は瑣末な論点にすぎないといことは有り得る。日本の従軍慰安婦問題の狭義の強制性に関する議論がそうなっていないか、私達日本人は、大局観を意識しつつ細部を詰めるという思考方法を磨いていくべきだと思う。

 そして、これができれば日本人は中国や韓国、さらに米国の学生と協力しながらリーダーシップをとることができる。このことを、二度目の政策コンテストでの優勝を通して学んだ。

◆日韓の法意識の違い
 日本は一度できてしまった法は少なくともその時点での正義や社会的コンセンサスを反映するもので、後に新しい価値観によってそれを覆すことはできないと考えやすい。

 一方、韓国では遡及立法も珍しくない。例えば、植民地期に日本に加担した人々の過去の土地等の取得を、訴求立法を用いて無効として没収したり、賠償を命じたりすることが今も行はれている。

 竹島に関しても、韓国の学生と議論するとこの「遡及立法」を用いても「正義」を追求しようとする姿勢が見受けられる。例えば、竹島については、韓国に力がなかったために、竹島編入やサンフランシスコ条約の返還領土規定の策定の際に韓国の主張を通すことができなかった、という意見を韓国の学生から聞かされることがある。ここでは、李承晩の行動は遡及的に正義を回復する行為である。

 日本人として、おかしいと思うことははっきりと主張して良いと思うが、相手の主張で一理あると思う部分には配慮を示すことも大切であると思う。例えば、サンフランシスコ条約の文言調整では、日本の交渉力や米国の情勢認識が影響した部分も大きいと思われる。

 竹島に関しては、二島のうち一島を日本領とし他方を韓国領とするという提案をしたところ、韓国の学生から賛成の意見をもらったことがある。原則論に囚われず、幅広い妥結の道を探ることが、日韓の長期的な国益に沿うのではないか。

◆高田馬場・新林考試村の桃宴
 高田馬場でソウル大学で出会った友人達を飲みに連れていき、新林考試村で中国のキャンパスアジアメンバー5人をマッコリ居酒屋に案内して飲む。

 北朝鮮の開発をやりたい、そのためにまずは金融の道に進む。
 盧武鉉元大統領のような大統領になりたい、まずは日韓の弁護士資格を取る。
 格差の著しい中国の地方を発展させたい。
 環境分野の学者として中国ひいては世界の環境政策をリードしたい。

 中国や韓国の学生と話していると、領土問題や歴史問題はあれど、彼らは同じ北東アジアに生きる仲間だと感じる。キャンパスアジアで出会った仲間達との友情に応えるためにも、アジアの平和を守り、アジアの時代を創るために働きたい。
 「行動しろ、リーダーになれ。」
 
 韓国での出会いや想いを糧に、これからも挑戦を続けていきたい。

◆アジア主義と自由主義
 清沢洌の評論を紹介した「外交評論の運命」は自由主義を支える勢力としての日本を考える上で参考になった。アジアの地域統合を進める上でも、どのような形での秩序形成を図るべきか、過去の歴史や思想に学びつつ、日本の針路を考えていきたい。

2013年5月31日金曜日

喫茶先進国

最近、歴史問題とか国際政治とかヘビーな投稿が続いていたけど、
今回は少し趣向を変えたテーマで執筆してみたい。

某コンサルティングファームのケース面接で、
タリーズの売上をあげるには?
という質問をされたことがあった。

その時の僕の答えは、
①ベタなところとしてまずは店舗増大
②既にやってる気もするけど、アイスクリームや昼食等のフードの充実
③プロント等を参考にしたアルコールの販売
をあげて、なんとか次のステップに進ませて頂いた。

韓国に留学して、韓国の喫茶店は日本の喫茶店より、
進んでいると思うことがあるので、そのことを紹介したい。

①Wifi完備でPCも充電し放題
②幅広い座席が多く長時間滞在できる雰囲気
③ケーキ、アイスクリーム、ワッフル、かき氷、軽食等フードが充実している

久々に吉祥寺に行った時に思ったのは、
①スタバの店舗が激減していた⇒韓国でもスタバの店舗は減少傾向にある⇒スタバは全世界的に一店あたりの売上をあげる戦略をとっているのか?
※原油高とかが続くと、ロジスティクスの点で店舗が多すぎるのは不利なのか?
②サンマルクがかき氷等のフードを充実させて、空間面では回転率をあげる改装を行った。
③ドトールが空間面で滞在時間を上げる改装を行い、学生を中心とした利用客がサンマルクから移ってきていた。

個人的に、日本に欲しいと思うタイプの喫茶店は、
WifiとPC充電設備完備で書店にも近く、勉強・仕事し放題かつ夜にはウィスキーのソーダ割りとか軽いアルコールも飲めたりする喫茶店です!
霞ヶ関とか赤坂とか付近にあると流行るような気もする。

2013年5月29日水曜日

韓国の中国観~百年後の国際政治を構想してみる

◆外交カードとしての独島、従軍慰安婦問題?
 韓国は中国、日米の間で中立的な立場をとりたい(朝鮮半島統一には中国の協力が欠かせないので)という声は韓国の教授からしばしば聞くこと。
 例えば、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)はアメリカの働きかけにより結ばれようとしたものだが、李明博元大統領はそれをドタキャンした【2012.6.29】。彼はその後、竹島に急遽訪問【2012.8.10】。韓国の新聞は日本の再軍備や歴史問題に対する警戒を指摘する論調で溢れた。竹島、従軍慰安婦等の歴史問題は韓国が日米との間で安全保障面の協力を強化する際の「言い訳」として作用する面があるのではないか。
 もっとも、従軍慰安婦問題の提起(李明博元大統領・野田元首相会談【2011.12.17】)は韓国の憲法裁判所の「不作為の違憲判決【2011.8.30】」に対応したため。独島訪問に関しては、実兄の逮捕【2012.7.11】等のスキャンダルから国民の目を逸らさせるため、もしくはこの全て、と考えることもできる。更に、従軍慰安婦問題等については女性の人権や元慰安婦の方々の救済等、外交上の駆け引きを超えた大義が存在すると思う。

◆韓国の人々の中国観
 韓国の友達の「中国観」を聞いて思うのは、日本とは中国観が違うということ。まず、彼らは「仮に武力紛争がおきれば中国には勝てない」と口をそろえて言う。中国との歴史は日本(元寇来襲や日清戦争で勝利)と韓国(勝ったことはない)では大きく異なる。次に、彼らが言うのは「韓国は明から清、清から日本への権力移行期でつく側を間違ってきた。今回は是非、正しい側を選択したい」と。
 (ちょっと話は変わるけど、ソウルの入国管理局(Immigration Office)には中国人専用のフロアがあったりして、ビザ申請を行おうとするその他の国から来た外国人とは扱いが違う。日中韓の外交官との昼食会で韓国の教授が中国の外交官に妙に低姿勢な発言をしていて違和を感じた時があった。)


◆百年後はインド、いや、真の「アジアの時代」?
 これに対する僕の応答は、「百年後も中国が世界で最大の経済大国だと思うか?」だ。中国は、今後五十年は発展するものの、急速な高齢化等が足かせとなり、徐々にインドに経済的な地位を譲ることになるのではないか。
 インド人の友人曰く「別にアメリカは好きでないが、中国は領土問題を抱えており嫌い。むしろ好きなのはロシア、フランス、イスラエル。」百年先は世界最大の民主国家であるインドの時代だとしたら、今後50年は日米韓同盟を強化して中国の安定的発展とアジアの平和を守り、インドが台頭した後に真の「アジアの時代」を創るという構想を描いても良いのではないか。
 そして、その時に日韓がリーダーシップを取るべきは、環境や厚労分野の社会的課題を率先して解決することだと思う。(技術が得意な日本は環境、儒教精神でお年寄りを大切にする韓国はヘルスケア等、棲み分け?)


◆その他、捕捉
 ※1、アジア派(?)の僕としてはアジア地域の平和は是非守りたい。しかし、同時に、日本の地位や独立も確かなものとして後世に引き継ぎたい。
 ※2、ちなみに、最近、竹中平蔵氏の翻訳により出版された「2052(ランダース)」では、環境問題解決の重要性と中国の政治体制の自由民主主義体制に対する優位性(多少国民が反対しても環境に良い政策を実行しやすい)を指摘していた。確かに、中国人の友人の中にも環境問題に強い関心を抱く者がいる。中国が長期的に発展しない可能性がないわけではない。(中国の高齢化の原因である一人っ子政策は現在、緩和されつつある。)


◆参考
「中国に立ち向かう日本、つき従う韓国」
「2052」


2013年5月21日火曜日

従軍慰安婦問題について考える

◆はじめに
 ソウル大学の授業で習ったことを参考に、従軍慰安婦問題に対して日本国内で行われている議論を考えてみたい。

◆問題の大局
 海外に出てみると、僕も含め、多くの日本人の強みは細部をしっかりとつめるところにあると思う。逆に言えば、大局的な観点から問題の根幹を見極めることは、韓国や中国の学生の方が長けていると感じるときがある。日本人には細部が目につきすぎるせいか、時に大局を見失いかねない弱点があるのかもしれない。

 従軍慰安婦問題に関する一部の議論についても同様の懸念を感じるときがある。この問題の本質として、最も重要かつ大きな部分を占めるのは、元慰安婦の方々が慰安所で体験されたことだ。ここで彼女たちは、帰ることも、「慰安」の拒否が受け入れられることもなく、1日に10人から20人の相手との性行為を、数年間にわたって続けなければならなかった。従軍慰安婦問題の内外の議論に関しても、この点を否定するものはほとんどない。

 では、最近メディアを賑わせている「狭義の強制性」という議論はどういうものか。これはさらに、募集期の強制性と移送期の強制性にわけられるのだが、僕も含め一部の日本人が気になるのは、募集期の強制性である。主張を要約すると、「全ての元慰安婦の方々を日本軍が強制連行したわけではない」ということだ。
 元慰安婦の方々の証言や元兵士の証言等を総合すると、元慰安婦の方々の募集経路は①強制連行(特に東南アジアや中国)②軍服工場で働く等、良い仕事があると騙された③経済的理由等から不本意ながら志願した、などがある。正確な数字や割合は明らかになっていないが、元従軍慰安婦の方の証言や兵士の証言から考えるに、この中で最も多いのが②、次に多いのが①、そして残りが③と思われる。
 国際社会では、ほとんどの元従軍慰安婦の方が①強制連行によって「募集」されたと認識されているように思われる。これに対し日本人として、「それは違うのでは?大半は軍による強制連行でなく、②軍の委託を受けた民間業者による騙取では?」と訴えたくなるむきがあるということについては否定しない。

 ただ、狭義の強制性の問題は全体の問題状況から見ると枝葉の論点であるということが意識されるべきだ。また、騙取であっても大きな意味での強制性の範疇を出るものでないということも重要である。

◆解決がいそがれるべき課題
 戦後、日本はこれらの元従軍慰安婦の方々に対し、アジア女性基金の活動を通して、首相からの謝意を伝える手紙の受け渡しや人道的観点からの償い金の受け渡しを行った。東南アジア、台湾、オランダ等ではこれらの事業は一定の成果をあげたようである。
 ただ、外国人の元従軍慰安婦の方々の中で最も大きな割合を占めていたはずの韓国においては、アジア女性基金の活動はごく一部でしか受け入れられなかった。

 韓国側が問題としたのは、①手紙ではなく、謝罪決議や談話等の公式の謝罪を求める。②政府と民間共同出資の人道的賠償でなく、全額政府出資の法的賠償を求める。の主に二点である。
 現在存命の韓国人の元従軍慰安婦の方は65名ほどいるとのことだ。狭義の強制性や法的/人道的賠償の議論を超えて、彼女たちが存命している間に何ができるかという議論がなされるべき時ではないだろうか。

 政治的に難しいのかもしれないが、国会での謝罪決議や首相による新たな談話の発表とアジア女性基金のような形での人道的賠償の再開は日本が最大限取りうる譲歩の形であると思う。韓国の多くの方々にもこの点を理解してもらい、日本の保守層にも我々が問題としているのは全体の問題状況からみてどれ程重要な問題なのかを理解してもらいたい。その上で、請求権条項など、日韓両国で問題となる条項を回避しながら双方にとって納得のいく妥結案を実行できるよう願いたい。そして、そのことが東アジアの未来と日本の未来を考えた上で、愛国者がとるべき日本の針路であると僕は思う。

◆参考
 アジア女性基金のウェブサイト

◆キャンパスアジア雑感
今日、中国のキャンパスアジアのメンバー全員を、
韓国人のキャンパスアジアメンバーお勧めの店に案内した。
半ば酔いながらも、中国の教育を論じ、中国の更なる発展を論じる彼らに、僕は好感を持った。

一人で靖国を参拝する日本のロジックを説き、中国人5人を飲みにつれて行った僕が思ったのは、
やはり東アジアの平和を守るべきだということである。

力の支えなくして、もちろん強国と対等な立場で日本の平和を守ることはできない。
しかし、貞観政要によると、軍事力の最も重要なポイントは抑止力であって行使ではない。

日本も、制宙権、制空権、制海権等の抑止力拡充に力を注ぎつつも、
その力の拡大に抑制を加え、その行使を最大限管理して、主に外交により問題の解決を図る。
これが、日本が目指すべき防衛外交政策であると思う。

2013年5月14日火曜日

憲法改正について考える

◆総論
全面的に変えるべきだとは思わない。
変えるなら、部分的に変える。
変えるとしても、政府運営の効率化や、
国民の自由の拡大の観点からの改憲がなされることに期待。

近年国民の改憲意識が高まっているというが、
その主な理由は、「決められない政治」批判に代表される、
政府運営の効率化に対する人々の期待が高まっているからだと思う。
改憲に賛成する中の多くの人々が望むのは、抜本的な憲法や国柄の改革ではなく、
統治制度の改善なのではないか。

◆変えるところ
◇政府運営の効率化に関連して(まずはここを改正すべきだと思います。)
・参議院の権限縮小(一番優先順位が高いところではないでしょうか。)
⇒衆議院の法案再議決要件を過半数+αに緩和。
(過半数としてしまうのは再議決制度の趣旨から行きすぎだと思います。)
⇒合わせて立法レベルで参議院議員定数、参議院議員歳費を削減し、地方自治体との首長との兼任規制を撤廃する。
・前年度予算踏襲に関する条項の復活見直し
⇒予算審議拒否をてこに政権を解散に追い込むなどの政治手法は看過されるべきでない。
⇒大日本帝国憲法71条を参考に、予算が決まらない場合の緊急措置を強化すべき。
・抽象的違憲審査制の導入(上記二つに比して優先順位は下がるところだと思います。)
⇒人権や法の支配の観点から、時の政権による無茶な立法や不適切な行政は裁判所からの牽制を受けるべき。

◇国民の自由の拡大に関連して(ここは個人の考え方に関わり、熟議が必要だと思います。)
・地方分権(道州制の実現)に関連して条約に関する条項(7、73条)を改正し、地方自治体にもある程度条約締結権を認める。
⇒FTAなどは日本全国単位で締結・合意形成を目指さず、例えば九州道のみ先行して中国や韓国とFTAを締結する等があってもよいのではないか。

◆変えないところ
12、13、97条など国民の自由に関する条文は堅持。
新しい人権などは、憲法レベルで盛り込むのではなく、立法で対応。生存権等しかり。
外国人の地方参政権は各地方自治体の政策に任せる。

最近話題の96条は、これを変えるべきでないと思う。
この要件が重いから憲法が変わらないというのは、
同程度に改正要件が重いドイツで多数の改憲がなされているため妥当でない。
全国民の代表たる国会議員の熟議の末に形成されたコンセンサスを持って、
憲法改正を発議するべきだ。
発議要件をゆるめると、多数派の価値観が憲法に反映されやすくなり、
少数派の権利も一定程度保持しようとする憲法の価値の根本が毀損されるのではないか。

◆9条
◇総論
・9条が日本の防衛予算の拡充に歯止めをかけ、専守防衛という日本の防衛上の立場を確立してきたことに一定の評価
・国際情勢(テロとの戦い、東アジア情勢)を踏まえ防衛力の強化や同盟国との協力強化も一定程度必要
・9条は変えず、解釈変更や立法で国際・社会情勢に最大限対応することを目指す。

◇現在の9条運用
・PKOなどは現在でも行われている。
・自衛権自体は解釈で認められている。

◇改憲ではなく、それ以外の立法等で対応できるのではないかと思われる事項
・アメリカ艦船が攻撃された場合の自衛隊の集団的自衛権行使
⇒日本周辺海域でアメリカ艦船が攻撃された場合のみ、日本艦船への攻撃と同視して自衛権を行使するということを立法レベルで認められないか。
・自衛隊の武器行使要件の緩和
⇒PKOなどで活躍する自衛隊の緊急事態の武器行使はできるだけ認めるべき。しかし、一定の歯止めもつける。
(※日本国ならではの国際紛争や国際社会の秩序維持への関わり方を今後とも追求していくべきだと思います。)

◇変えないメリット
・今後とも防衛予算の拡充に一定の歯止めをかける
・周辺諸国に対して、対抗よりも協力を推進するという姿勢を示す
・日本の軍事力の展開戦域を日本国の周辺に限定して判断する姿勢を示す

◆現行の一部の改憲論について思うところ
①変わらなかったから変えるという趣旨には賛同しない。
変わらないというのはそれだけ国民の支持を得てきたということ。
現行憲法で日本は奇跡と言える戦後復興を達成している。
評価すべきは評価すべきであり、全否定する必要はない。
変わらない憲法こそ私達の祖先の先見性と卓見に対する敬意の証であり、
私達の誇りとなすべきことではないか。

②米国におしつけられたから変えるという趣旨にも賛同しない。
憲法の内容自体に問題があれば部分的に改正すべきだと思うが、
誰が書こうと国民の賛同があり、日本の国益に叶った憲法であれば堅持すべき。
誰が書いたかは、改憲の理由にならない。
それに現行憲法の起案には当然私達の先代も携わっている。

③現行憲法が公布されて60年たったから改憲するという趣旨にも賛同しない。
時代の変遷には憲法以外の立法・法改正や解釈変更で対応するのが基本。
本当に時代にそぐわなくなったと考える条文は条項ごとに改正すべき。
また、60年たったから抜本的に改憲すべきと言うなら、60年ごとに憲法の大改正を行うのか。
日本は天皇制の継続に見るように、継続に価値を置く国。
憲法についても、継続性に意義を見出す議論があってよいのではないか。

④他国が憲法を変えているから変えるべきとの趣旨にも賛同しない。
他国が憲法を変えていること自体は、日本が憲法を変える理由にはならない。
自分達が国際・社会情勢を判断して、自分たちの決断によって憲法は変えるべき。
日本はこの人口規模にして、戦後の焼野原から世界で有数の経済大国にのし上がった国。
もっと自分の国の歴史と自分たち自身に誇りを持って、憲法改正も議論していいと思う。

国の在り方を決める憲法、自分の頭で考えながら改憲を議論していきましょう!

◆参考
(寄稿 憲法はいま)96条改正という「革命」 憲法学者・石川健治

※日本とシンガポールの「自由」比較・中国流自由観
 中国人の友達から日本とシンガポールの自由を比較する論文を読んだことがあると聞いた。民主主義ではあるが経済的規制の多い日本と民主主義ではないが経済的規制の少ないシンガポール。民主主義を制限することで最大多数の国民に最大限の自由を与えようとする中国流の自由観があると。個人的には、上の主張は司法権の立法権・行政権の牽制により実現されるべきだと思う。同時に、他国の憲法や政治思想を比較することは自国の憲法を考える上で一つの視点になると感じた。
 ちなみに、韓国では学生や法曹を中心とする政治運動が盛んで、この点では日本以上に民主主義の力がある国だと思う。
※政教分離に関連して
 議員が宗教法人である靖国神社に参拝している現状は法的に問題があると思います。また、A級戦犯の合祀に関する外交問題、自分たちの家族を合祀するのをやめて欲しいと考える日本の人々にどう応えるかという国内問題などもあります。これらに加え、日本のために戦った人々に正当な評価が払われるべきだという要請にも配慮してどのような政策をとる必要があるかを考えるべきです。
 一つの視点となるのは、兵士の鎮魂の場と、神道の宗教の場とを切り分けて議論することを可能とする政策を考えることではないでしょうか。靖国神社に関しては、立法レベルで改正し、兵士の鎮魂の場所と宗教は切り分けて議論できるようにすべきだと思います。靖国神社の施設の管理・運営・宗教行為の執行自体は宗教法人である靖国神社に任せ、国が靖国神社の記念館の掲示物の内容や、祀られている兵士の名簿を管理するようにするのはどうでしょうか。また、名簿からの氏名削除を求める方々の声にも応えること、加えて、A級戦犯氏名の名簿からの削除等も検討されるべきだと思います。
※解釈改憲について
 行政において法律を解釈すること、そして、行政全体の解釈が憲法などに抵触しないかを判断する内閣法制局の役割は重要だと思います。ただ、内閣法制局や閣議決定により示された憲法解釈が憲法の解釈の限界を超えていると考えられる時、その違憲無効を判断する権限が現在の最高裁にあるのかが気になります。もし、具体的審査制等がネックになってないとするのであれば、法律の最終的な解釈権限は裁判所にあるという三権分立の趣旨を滅却するものであり、妥当でないと思います。

2013年5月2日木曜日

靖国・領土 中韓の学生はどう考えるか?

ソウル大の国際関係大学院では毎週一回、国ごとのランチミーティングが開催されている。
今日のチャイニーズテーブルのテーマは日本の靖国神社参拝と領土問題。
(以下、中国と韓国の学生との議論の議事録です!)

①日本の政治家はなぜ靖国を参拝するのか?
・植民地時代を正当化するためではないか。(韓国)
・自国の民族主義を高めることが狙いではないか。(中国)
・政治家が靖国神社を参拝する理由は、自分たちより強大であったロシアやアメリカと戦った記憶を国民に喚起させるということ。現代の状況にあてはめれば、日本の安全保障上の脅威は中国であり、ホットなのは尖閣問題。参拝のメッセージは、中国の台頭に対しても、理に沿わないことがあれば、日本は毅然と立ち向かうということだと思う。

・靖国の記念館の掲載物の内容は戦争を美化するものが多いがなぜか。(中国)
・靖国記念館の掲載物の内容は日本の主流派の意見を代表するものではない。むしろ、少数派の見解を示すものであり、基本的に政府のコントロールを受けていない。

・日本の多くの人は靖国参拝をどう考えているのか。(中国)
・中国や韓国の批判を理由に日本のリーダーが参拝を行わないというのは、クールじゃないということ。この問題に対して、韓国や中国の主張を踏まえて考えている人はそんなに多くない。(※この点に関しては、国内でも意見が割れていて、靖国神社に祀られている兵士に敬意を表してほしいと願う方々がいる一方で、近年の靖国関連訴訟にあるように、自分たちの家族を合祀するのをやめてほしいと考えている方々もいる。)

・日本の歴史教育を変えることは可能か。(中国)
・不可能ではない。難しい歴史問題について、学生が日本と諸外国の双方の立場を勉強するのは大切なことだと思う。

②尖閣や竹島を始めとする領土問題にどう向き合うか?
・精神的な問題である靖国と違って、尖閣には資源という実益が絡む。近いうちに、空母が尖閣に向かうことになるだろう。(中国)
・また、以前と違って、世界は中国の言葉をより聞くようになっている。(中国)
・中国のソフトパワーは高まっているので、むしろ挑発を差し控えるべきではないか。(中国)

・韓国は領土問題について中国と立場が近い。ICJに行くという提案は受け入れ難い。竹島に関する条約等では日本に有利なものが多く、ICJでは韓国に不利な決定が下される可能性が高いからだ。しかし、法的文書のほぼ全ては力のなかった韓国が日本や国際社会に強制される形でつくられたもの。正義は、わたしたちにあると思うし、それがICJで覆るとしたら耐えられない。それに、実行支配の法理等の西洋の慣習をベースとするルールは、アジアの領土紛争には適用できないのではないか。(韓国)

・竹島の二島(西島、東島)を日韓で一つづつ分割することを授業で提案してたよね。個人的にはその意見は検討する価値があると思う。(韓国)
・僕の意見は日本ではかなり少数派だけどね。(一同笑い)

・私は、やっぱり独島は韓国の領土だと思うけど、議論していくことで少しづつ自分の立場をニュートラルなものにしていけるよな気がする。(韓国)
・第二次世界大戦や歴史問題に対する日本の立場をはじめて聞いた。良い、悪いを判断する前に、まずはお互いの主張を理解することが大事だよね。(中国)
・実は中国は尖閣問題を棚上げにしておいて欲しいと思っている。この問題は、南沙諸島や台湾やチベットなどの国内問題とも繋がっている。日本の姿勢を東南アジア諸国が注目している。また、尖閣には台湾も絡んでいるから、中国としては扱いにくい問題なんだよ。(中国)

※関連1;「一流の国、日本」という観点から靖国神社参拝や政治家の姿勢について考える。
※関連2;Japanese people's perception of WW2 and Yasukuni Shurine

Yasukuni Shrine―How Japanese people percept WW2 and the symbol?

  First, knowing each other’s view toward WW2 is step for creating common perception about history and mutual understanding.

◆How Japanese people percept WW2?
 -Asian countries; Victim
  Many Japanese people think colonization is basically wrong.
  But this is not only wrong for us but also other countries colonization is wrong.


 -US and Russia; Competitor
  Before WW2, there was era of expanding colonization.
  And in Asia, Japan expanded our colony by spending huge blood of Japanese people.
  But Russia and US also wanted to get the interest of Japan, so finally we had to fight for protecting our interest which we got more earlier than them.


◆What kind a people are in Yasukuni Shrine?
 -How to dead
  1) During the fight against resistance of Asian Countries
  2) During the fight against Russia and US
  And category 2 people are far more than category 1.So, main motivation of going Yasukuni is not for praising colonization.


 -What they did
  1) Missing strategic decision; A class criminals were leader of Japan during WW2.
 2) Murder and Rape; Some soldiers broke the rule of Japanese Army.
  3) Nor miss judged, nor broke Japanese army rule, just fought for protecting our country, belief and who they loved.

 -For whom we have to pray?
  It is wrong to show respect toward cotegory1 and 2.
  But it is natural to show respect to the person of cotegory3. They didn’t commit murder and rape in severe situation. And they kept fighting even rival was stronger than us.


◆Tension between domestic Japanese and international Japanese?
  I think Japanese politician’s action will give damage to Japanese people who live in abroad or business in abroad. The thing which Japanese politicians who went to the Shrine have to do is explaining their logic to international society and also to Japanese people.


※Japanese ver ; http://ksi-lucky.blogspot.kr/2013/04/blog-post.html

2013年4月26日金曜日

靖国神社参拝を考える

◆本質的な批判
国を守るために戦った方に敬意を表するのは正しいとして、
①虐殺や強姦を行った方
②重大な意思決定上の過失を犯した方
に対しても敬意を表すべきかということ。

靖国神社の問題点は①②の行為を犯していない、
純粋に国や家族を守るために戦って亡くなった方と、
①②の行為を行って亡くなった方が一緒に祀られていることだ。

更に進むと、国を守るために死んだのであれば、
①や②の行為を行っても許されるとする考え方を、
より良い国を創るために継承すべきかということだ。

僕は日本には一流の国になってほしいと思う。
一流の国であれば、軍規を乱した兵士に敬意を表するだろうか。
一流の国であれば、判断を誤った指導者に敬意を表するだろうか。

一流の国であれば、上記二者に対しては厳しい批判を行いながらも、
そうでなく純粋に国を守るために戦った方々に対しては敬意を表するものだと思う。

◆戦後から受け継がれている課題
戦後日本は、上記の区別をきちんと行わずに来た。
これについては与党であった政党の不作為が問われるべきだ。
更に、近年においては首相や国会議員の有志連合が公式参拝を繰り返していることである。

この実害としては周辺諸国との協力が阻害されると共に、
アメリカを始めとする同盟国から、アジアの安定化や北朝鮮への関与について日本は
国際社会と一致して政策を進める気概があるのかという不信感を抱かれること。
このような外交上の損害が生じることである。

靖国神社に参拝した政治家から国内及び国際社会に対して語られるべきは、
①②の方に対しても、敬意を表することが許されると考える理由であろう。
更に進んで、第二次世界大戦を日本がどのように評価しているのかということをはっきりと語って、
国際社会との合意形成を行うことであろう。

かかる点をあやふやにしたままで、なし崩し的に参拝を繰り返すのは、
一流の国、日本を創るためになすべき行為ではないと思う。
また、今は北朝鮮に対して北東アジア諸国が団結して向き合うべき時ではないだろうか。

◆日本を離れて生活してみて
 靖国神社参拝は、国内向けには選挙対策上のアピールなど、一定の効果をあげられる行為かもしれない。しかし同時に、国際社会でビジネスを行う方や生活を行う方には決してプラスには働かない。
 バス停で日本語を話していると「3.1独立運動の前後に日本語を話すのはやめるべきだ」と注意されたり、レストランでガンをつけられたりといった経験が以前より増えたと感じる。もっとも、話し合おうとする方に対しては日本の立場を丁寧に説明し、偏見を持って接してくる方には気合で返すことで対応するので問題はないと言える。ただ、中国等では状況はさらにひどいと聞く。
 「何々人」というカテゴリーに対して敵意を向ける行為は、見識のある行為ではないだろう。個人によって考え方は様々であり、それに対して議論するなり批判するなりを行うべきだ。これは、日本国内の一部の人にもあてはまることだし、そのような行動をとる人ほど、問題について限られた理解しか持っていないと思えてならない。

※関連1;中国や韓国の学生の靖国神社参拝・領土問題に対する考え方
※関連2;For foreign reader, "How Japanese people look WW2?", brief introduction.

2013年3月30日土曜日

尖閣諸島 日中双方の主張

 日中双方がICJに領土問題を提訴したらどのような主張をし、どのような判決が下るのだろうか?これまでの日中双方の主張をまとめながら考えてみたい。

◆1歴史(中国側立論)
 双方とも歴史上尖閣諸島は自国の領土だと主張する。ただし、この歴史がいつを起点とするかは日中双方で異なる。日本の場合は尖閣諸島を編入した近代を起点とする。一方中国は古代を起点とする。
 中国は多数の古文書を持ち出して尖閣諸島の存在を古代から認識しており、自国の領土と考えてきたと主張する。これに対し、日本は一つ一つの古文書の解釈や信憑性に疑義を提起するだろう。
 この点に関しては、「日本より先に中国は尖閣諸島の存在を認識していた(場合によっては+自国領と考えてきた)」という主張をICJは認定するのではないか。


◆2国際法;実効支配の法理(日本側立論)
 しかし、領有権を決める上で重要となるのは、当事者のうちいずれが先に実行支配を確立したかということである。島の領有権に関わるICJ判決や仲裁判決の多くは実行支配の法理に基づいて出されており、本件でも当法理が適用される可能性が高い。
 この場合、「島に人が住んだ」とか「施政権を及ぼした」などが実効支配確立を判断する基準となる。この点、日本は1895年の編入から人が住んだり、施政権を及ぼしたりしており、1895年以降の実行支配がICJで認められるだろう。
 そこで、いくら中国が上記の歴史上の反論を行ったとしても、①「ICJが実効支配の法理を本件に適用しない」②「中国が日本より先に実効支配をしたと立証する」かのいずれかがない限り、最終的にはICJは日本の尖閣諸島領有を認めることになると思う。


◆3ポツダム宣言受諾による日本側の領有権放棄(中国側立論)
 中国はまた、(仮に1895年以降、一時的にも日本が同島を「不法」領有したとしても)カイロ宣言及びポツダム宣言の受諾により、日本は尖閣諸島の領有権を放棄したと主張することが考えられる。しかし、同宣言によると、日本の領有権が及ぶ範囲は「連合国により決定される」とある。戦後、アメリカは日本に尖閣諸島を返還した。そして、僕が知る限り、これに対してイギリス、フランス、ロシアが反対の立場を表明したことはない。また、中国も71年までは抗議を行はなかった。さらに、現在も日本が尖閣諸島を実行支配している。
 以上の事情を考えると、「ポツダム宣言受諾による放棄」という主張がICJで認められる可能性は低いのではないか。


◆4追認もしくは有効な反論の欠如(日本側立論)
 国際法上、紛争地の実効支配を相手に奪われた場合、それに対する抗議をしなければ、後でその領有権を争うことができなくなる。この点、「国家レベルでの抗議」や「ICJへの提訴に類する行為をしたこと」がこれを為したかどうかの判断の基準となる。本件において、僕が知る限り、中国は1895年から1971年まで上記の抗議を行っていない。
 以上から、中国が抗議を行ったこと、(もしくは抗議を行はなかったことが同法理の適用を正当化することにならないという特段の事情の存在)を立証しない限り、中国はICJで本件を争うことができないという判決が出される可能性もあると思う。


◆5実効支配の法理の検討
 ICJの判例には厳格な意味での先例拘束性はないので、本件でも別の法理が提案されたり、実効支配の法理が適用されなかったりする可能性はあると思う。その場合の予想されるICJのロジックは以下の二つが考えられる。


 ①実効支配の法理が植民地獲得と密接に結び付いた法理であることを認定し、日本の植民地支配を否定するポツダム宣言やカイロ宣言とその受諾を引用しながら、日本の植民地獲得期の歴史に関連して生じた領有権紛争(この点も尖閣諸島がそのようなケースにあたるとICJが認定)に同法理を適用することができないとすること。
 日本人としては受け入れがたい判決だが、第二次世界大戦を世界の他の国々の人々や判事がどのように理解するかによっては、このような判決がでる可能性もあるかと思う。


 ②近代以前の東アジア地域に、西洋諸国の慣行を起源とする実行支配の法理とは別の法理が存在したとし、例えば、東アジア地域に関しては、実効支配ではなく、「発見の順番」や「地図等を通して継続的に自国領と認識してきたこと」を基準として領有権を判断するという新たな法理を打ち出すこと。
 このような判決が出た場合、若干ラジカルな影響を国際法やその後の外交交渉に与える可能性がある気がしないでもないが、このような判断(もしくは①②の複合形態の判断)がなされる可能性もあるかと思う。


◆6実際どのような判決がでるか
 ICJが白黒をはっきりつけるということも可能性としては考えられるが、事実整理や実体面の審議と並行して、あえてすぐには結論を出さず、日中双方に交渉による解決を働きかけるということも、ICJのとりうる行動として予想することができる。この場合は、尖閣諸島が複数の島により成り立っていることに注目して、それぞれの島を日本と中国(場合によっては+台湾)で分割して、新たな国境線を引くように提案するということが考えられる。


◆7まとめ
 以上のことは、全て可能性の話にすぎない。しかし、いずれにせよ、問題の解決や緊張緩和のためには、日中双方の人々が両者のロジックや主張する事実を理解し、双方のロジックの弱点や敗訴の可能性を頭に入れた上で、交渉による解決やICJの判決による解決を受け入れる素地をつくっていくことにあるのではないかと思う。


 ※中国人の友達に「ICJ提訴」の話を振ってみたところ、彼は「日本は敗訴してもその結果を受け入れないのではないか?」と言っていた。個人的には、そんなことはないと思う。中国はどうなのだろうか?

2013年3月21日木曜日

中国と民主主義

◆中国の民主化?
日米両政府にとって中国の民主化は重要な外交目標と授業で習った。
一方、中国の人々は民主化についてどう考えているのか?
中国の学生と議論してみた。

◆まず、中国の問題は汚職である。
例えば、中国ではアパートを買うとき、家をもっていない人には低い税率が適用され、
家を既に所有する人にはそれより高い20%の税金がかかるという制度がある。
しかし、官僚と富裕層の癒着がしばしば発生し、既に家を所有しているのに、
低い税率で新たな建物を購入する人がいるということだ。
先日も北京で偽造された住民カードを19枚ほど使って多数の建物を違法に購入した人が摘発されたらしい。

※ちなみに韓国では、家を借りる時、1年とか2年とかのまとまった賃料を先払いして、
賃貸契約を解除する時に先払いしたお金を返してもらえるという制度がある。
土地の値上がりを前提に大家さんの投資意欲を喚起させるためにつくった制度だが、
最近土地の値上がりが鈍化してきているという話も。

◆この、汚職という問題はなぜ発生するのか。
自分たちなりに考えてみたのは、
①文化的要因;長い歴史を通して中国では癒着が行われてきており、多少の癒着には目をつぶる傾向がある。
※中国ではビジネスをやる上でも政府や大物との人間関係が重要と言われるが、このへんの事情も関係している?
②制度的要因;司法権の力が党に比べて強くない。また、政権交代の仕組みがないため、権力の浄化を行いにくい。
※党による内部浄化の努力が続けられているが、限界がある可能性も。

◆では、この問題にどう対処するのか。
この点に関して、中国では制限的に民主主義を導入することや、党の中の派閥を活用して政権交代(?)を可能にする方法などが提案されているらしい。
また、中国では、中国の歴史や文化にあった独自の統治機構を創っていこうとする勢いが盛んだということだ。

◆中国版民主主義
地域研究の世界では、「単線的な現代化モデル」は否定されている(らしい)。
また、”人類はまだ最高の統治制度をみつけていないが、民主主義以上に悪くない制度もみつけていない”
って話をどこかで読んだ気がする。
中国の人々が自分たちなりに統治機構の改革に向けて努力する向きは歓迎したいし、
その結果、中国の民主主義が日本や米国のものと多少異なっても良いのではないか。

◆民主主義はいかなる社会条件下で機能するのか
最後に、なんとなく考えてきたことをまとめてみると、
①社会的連帯もしくはある程度の同質性
※歴史と土地に根差した民族が国内に散在している社会では、選挙を行ってもその結果が国というより自分たちの民族を利する政策の選択につながりやすく、民主主義が機能しにくいのではないか。
②国民の平均的な教育水準の高さ
※投票権を持つ一人一人が、財政や外交についての基本を身に着けることが重要なのではないか。そでないと、極度に排外的な政策が選択される可能性や、放漫財政を招く危険性が高くなり、持続的に民主主義が機能することを危うくする可能性も。
③法による民主主義のチェック
※時には多数が誤ることもある。大きな決定を下すときには、それが拙速になされるのを防ぎ、あまりにも正義等の観点に照らして問題がある決定が下された場合はそれを止める力が存在することが、持続的に民主主義を機能させる上で重要なのではないか。その観点から、民主主義体制下では、司法権が多数決の仕組みを監視・牽制できることが重要だと思う。

※少し話は変わって、大陸系の学生と比べて香港やマカオの学生は、
韓国や日本の学生と感覚が近い人が多い気がする。
その繋がりってわけでもないけど、香港を舞台にした映画「天使の涙」に出てきそうな一曲。

2013年3月17日日曜日

日韓の宗教と文明―Multi/Mono God Culture?

韓国の寺では祈りの歌が聞こえた。
日本の読経と異なり調べがある。
なんだかコーランに近い感じだ。

「文明の衝突はもうよんだ?」
そんな感じで韓国人の友達に話を振られ、
日韓の宗教について考えることに。

韓国の場合、人口の約3割がキリスト教を信仰している。
日本の場合、キリスト教を信仰するのは人口の約1%だ。
なぜこのような違いが生じたのだろう?

①近代化期に韓国の知識人の多くはアメリカに渡った。対して日本の知識人の多くはヨーロッパに渡った。
②現在でも、韓国でトップクラスの大学であるヨンセ大学やイファ大学はミッション系。
⇒韓国の知識人はよりキリスト教に親和的であったのではないか?

③韓国では朝鮮戦争期以降、急速にキリスト教が広まった。アメリカ政府の積極的なキリスト教布教も行われた。
⇒第二次世界大戦後、日韓ともアメリカの影響を強くうけたが、日本は神道など強い宗教があった一方で韓国にはそのような宗教がなかったのではないか?

そんな感じの話を何人かでガヤガヤやっていると、
「日本もキリスト教を受け入れていればあんなことはなかったのにね。」
って感じで韓国系アメリカ人の友達が話を振ってきた。

日本が明治期にキリスト教を受け入れていれば日本の第二次世界大戦に対する関わり方は違ったものとなったのだろうか?
それはそれで興味深いテーマだと思う。
一方で、知識を受け入れても日本古来の精神を守ろうとした日本に日本らしさみたいなものを感じた。

「アジア諸国の中でいち早く産業化を達成した日本は尊敬に値する。」
有難いお言葉を頂戴しながら思ったのは、日本の多神教の伝統だ。
日本は多神教の文化を持つから海外の文明を接受する時に過去を否定する必要が少なかった。
だから、海外の文明を受け入れる時も国内の摩擦少なくそれを受け入れることができる。
一方で、新しいものを受け入れて過去を否定するのは苦手なのではないか?

韓国では戦後処理について日独の比較がよく行われるが、
過去を現在に引き継いでいくのは日本らしさの一つだと思った。

日本の地域研究の授業で読んだ「菊と刀」によると、
日本は精神の物質に対する優位を叫んでアメリカと戦ったらしい。
物量では負けるとわかっていても、精神はそれを凌駕する。
そう信じて大敗し、多くの犠牲者や反省を遺した。

一方で、精神と物質の対比という文明批判の視線は、今にも肯定的な形で活かすことができるのではないか。
環境問題がクローズアップされている現代において、日本が持つ価値観や技術を活かしたい。

ソウル大のキャンパスアジアプログラムは熱い。
朝まで飲み明かした後に寺の見学を入れていろいろ話す。
そんな感じでプログラムを組んでくれた実行委員の友達に感謝したい。


2013年1月1日火曜日

北東アジア諸国の国民性から考える日本人の強み、歴史問題

韓国に行って驚いたことがある。
例えば憲法9条の改正議論。

日本にいる時は、韓国や中国などアジア周辺国は
憲法9条の改憲に極めて敏感で、
これを変えようとするなら、大きな反日デモがおきかねない。
そんなイメージを持っていた。

しかし、実際ソウル大学の安全保障の授業で、
同世代の学生と議論してみると、
日本の9条改憲という主張は、さほど反発なく受け入れられる。

特に、兵役を経験して大学院に来ている28歳前後の学生達には、
日本の国際情勢の認識なども交えて説明すれば、
むしろ日本の9条改革を支持してくれた。

自前の軍隊を持ち、国益に応じて海外に派兵を行っている韓国の学生からすれば、
日本も軍隊を持つのは普通のことであり、
そこに戦前に関連するアレルギー反応は見られない、ということかもしれない。

日本にいたころと違ったのは、竹島でも従軍慰安婦の問題でも同様だ。
確かに、学生の間でも日本以上に関心の高い問題であるが、
こちらに理があると思ったことを説くことで喧嘩が生じるとか、
仲が悪くなるといったことはなかった。

日本人として、思うことははっきりと主張していいと学んだ。
しかし同時に、韓国や中国と比べた日本の違いも認識した。

僕は、北東アジアの人々と比べると日本人は抜群に論理的、もしくはきめ細かいと思う。
これは、中国や韓国の学生とグループ発表をやるなどの経験を通して感じたことだ。

日本人は基本的に物事の繋がりに敏感で、筋が通らないことを認めない傾向が強い。
これは一握りの人がそうというわけではなく、日本人全般に言えることだと思う。
日本人はきめ細かで、物事の繋がりをきっちりと考えていく。

それに比べ、中国の学生は、日本人の僕から見るとよくロジックが「飛躍」する。
しかし、常に大局や本質を見た上で重要なポイントや大きな方向性を示すことに意を払っていたという印象だ。
そして韓国の学生は日本と中国の中間。
適度にロジックを「飛躍」させながらも、クリエイティブ、かつ意思決定のスピードが速い。
(日本人としては、細かいが重要だと思われるポイントを指摘する場合はタイミングに配慮し、
グループの方向転換を主張する時は、できるだけ本質論になるよう説明の仕方を工夫すると上手くいくことが多かった。)

ちなみに、これらの違いは国家運営の方針にもあらわれていると思う。
日本では、何か改革を行う前に、徹底的に問題点を洗い出し、その対応策を検討して、合意形成を行う。
TPPへの対応などもその例ではないだろうか。
これに対し、韓国では「見切り発車」も多い。

例えば、自由貿易協定では既にEUとアメリカとFTAを締結しており、そろそろ中国とのFTAも締結しようとしている。
また、日本よりおそく始まったロースクール制度であるが、ロースクールの数は厳しく制限されており、
新司法試験の合格率は高く、ロースクールが設置された大学の法学部は廃止されている。
(ただし、司法試験合格後の就職難が日本以上に深刻だという話も。日韓とも新司法試験の合格者は約2000人。)
さらに、アジア通貨危機後はIT化の波に乗るために財閥の統廃合によりサムスンやLGを生み出した。
現在の韓国ではWiFiが非常に普及していて、チェーン店のカフェでも登録不要かつ無料でネットを利用できる。
しかし一方で、大企業の一人勝ち構造が生じており、中小企業が弱く、国内の格差が日本以上に大きい。

話を戻そう。
歴史問題の対応についても、国民性の違いを考慮する必要があると思う。
日本人にとって、筋が通らないことでも、
韓国や中国の人からは、
「やたらと細かいことをあげつらい、結局のところ言い訳なのでは」
と思われていることは、慰安婦問題や領土問題の構造とも重なる部分があると感じた。

日本人としては当然つながらないと思えることでも、
国際社会の基準でみると、「つながる」ということはあるのかもしれない。
自分の強みに絶対の自信を持ちつつ、
それを世界標準と思わず、
謙虚に世界の「平均値」を学ぼうとすること。
世界を知り、己を知ることで、自分たちの強みをより効果的に活かすことができるようになるはずだ。

日本人の論理性や緻密性はピカイチだと思う。
主張すべきことは堂々と主張する一方で、
大局観を意識し、時には大きな視点から論理を「飛ばして」みせる雅量とハートも、
これから北東アジア諸国との関係を進める上で、
僕たちが意識していくべきことではないだろうか。

同時に、日本と向き合うことになる海外の方々には、
日本人は感情的だから「細かい」のではなく、
日本人の感覚では「論理的でない」と思うことには納得できない
と主張している場合もある。
ということを理解して頂ければ、話し合いがスムーズになると思う。

困難な課題を乗り越えるためには双方の歩み寄りが必要なはずだ。

そろそろ桜の季節ということで、아침(アチム) - 불꽃놀이 (花見)
※高音質版はこちらの方のブログのlist⇒3曲目にあります。

将棋vs象棋の尖閣問題?


あっという間にソウル大学での一学期が終わり、
冬休みである。

寮の生活とは楽しいものだ。
将棋、チェス、象棋(シャンチー。中国版の将棋)、
日本から来た後輩や中国からの留学生とのバトルが熱い。

さて、将棋やチェスにはその国の軍事思想があらわれていると思う。

将棋の最大の特徴は、前線で戦略物資を調達できること。
攻めて敵のコマを取れば、そのコマを使って更なる攻撃に繋げることができる。
これが、劣勢からの逆転を可能とさせるゲームの要素で、
将棋ファンを魅了させる一つのポイントだ。
しかし、これを実戦にあてはめると、補給軽視であるとか、奇襲重視だとか、
なかなかリスキーな体質を生むことにも繋がるのではないだろうか。

尖閣問題でいう公務員の駐在は、将棋で言うと、「持ち駒の投入」にあたると思う。
硬直した状況に対処するための一手としては手堅い。
しかし同時に、外交的には更なる挑発と受け止められかねず、
「戦闘開始」のゴングともなりかねない。

対する中国。象棋ではどうか。
象棋には防御という発想が乏しい。
将棋で言う囲いの陣形もなく、
友人も言っていたが、「攻撃が最大の防御」である。
象棋をプレイしてみると、
初手から「砲」と呼ばれる敵のコマを飛び越える飛車や、
「車」と呼ばれる二つに飛車を使っての、
激しい攻め合いが行われる。
要するに、やらなければやられるという世界である。

将棋と象棋。守りの一手が先手の初手と解釈されれば、
なかなかリスキーな展開になりそうだ。

ただ、現実の世界では、
僕が接した中国の留学生たちは
基本的に大人しい子が多かったし、
実際話してみるといいヤツが多かった。
これは韓国の学生でも同じで、
儒教の影響なのか、ソウル大学で出会った中韓の学生は、
温厚で懐が大きいという印象である。
対する、僕や後輩など日本勢は武士の国なのか、
気概というか、尚武の気を尊ぶ傾向にあるように思う。

日本の指導者には勇ましい発言をする方々が多いが、
中国や韓国の指導者層が同じく尚武の気風を重視するかどうかは、
日本の状況の類推だけからは判断できない。
武士道より、儒教の影響を見るべきではないだろうか。

尖閣問題については、
先占の法理は日本の武器になると思うが、
双方の事実認識と法律論があるのが訴訟であり、
ICJに問題を持ち込んだ場合には、
敗訴のリスクも一定程度覚悟せざるを得ないだろう。

尖閣は地政学上の要所だと思う。
今実行支配しているこの地を、
ICJに持ち込むことで敗訴リスクを抱えるのは賢明な選択だろうか。

同時に、中国における日本企業の活動や日中貿易も重要である。
領土問題をこじらせて再度の大規模なデモを誘発することは、
国益に叶う選択だろうか。

実行支配した上での棚上げの意義は、もう一度見直されてよいと思う。

最後に、日中双方の未来のためには、
両国の人々が双方の立場を理解し、
穏健な判断ができるようになることが第一歩であると思う。
キャンパスアジアプログラムに参加させて頂いた学生の一人として、
微力ではあるが力を尽くしていきたい。

新華社
http://jp.xinhuanet.com/2012-09/25/c_131871899.htm
外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html

おまけ
象棋の遊び方
http://www2.tba.t-com.ne.jp/xinlamian/zhongguoxiangqizoufa.html
コンピュータとの象棋対戦
http://www.4399.com/flash/48747_1.htm

※最近後輩と話していて思ったこと
 日本の学生に気概のようなものがあると思われるのは、部活の影響もあるのかもしれない。
 海外の学生と日本の学生を比べると、語学など、弱い部分が目につくことが多いが、チームワークとか気合みたいなところは結構、日本人学生の強みなんじゃないかとも思える。中韓では部活はあまり盛んでなく、基本的に大学受験の勉強や語学の勉強中心とか。日本の部活は問題点もあるのかもしれないが、かなり重要かつ日本教育の特徴となっている部分だ。
 ちなみに、韓国では兵役が、日本の部活の「代わり」として機能していると考えることもできると思う。(兵役の方が確実にハードだと思うが。)