2018年9月29日土曜日

英語ロジの世界

 入省して四年が経ち、国際的な部署に異動しました。異動後2ヶ月で海外出張は三回と、今までとは全く異なるグローバルな環境で仕事をしています。入省当時に叩き込まれたのが、「ロジは命」という言葉です。これは、①事前に誰がどこにいくのか等をきっちり詰めて決めておくこと②現場で事前に決めた通りに事態が進行しなかった場合は、関係者を宥めたり、脅したりして物事をできるだけ当方の望むように進める、ということだと思います。
 そして、海外で比重が高くなってくるのは後者(②)です。それは、事前に物事をきっちり決めてその通り動くというのは世界でも特徴的な日本の文化だからだと思います。海外では、直前に大臣が出席する会議の開始時間が特に通告もなく変ったり(嫌がらせという可能性もあるような気もしますが)、事前の交渉では当方が望むこと(例えば会場に通訳と随行と政務合わせて4人入れろ等)と先方が望むこと(一ミリの例外もなく会場に入れるのは三人までで、入場者の変更も認めない等)が折り合わないことが多いからです。さらに、事前のルールはガチガチに決めている一方で現場のチェック体制はザルであることもままあります。
 そこで大事になってくるのが、②を支える現場対応力です。これは、例えば入れないと言われているエリアにも忍者的に入ってみて政務が通れるかを確認してみたり、ガードマンの目を盗んで会場に突入したり、多少無理スジの要求でも相手に強く出たりしつつ交渉する力だと思います。
 そして、意外にもここでは流暢な英語はそこまで必要でないと思います。話せるのは、例えば、hurry upとかdo it right nowとかだけであっても、要は相手がこちらの気迫に押されて言うことを聞けばそれでOKです。(勿論、時にはジェスチャーも交えつつ会話して笑いをとったりするソフトな力もあると良いとは思いますが。)そして、この力は1年目の窓口業務で洗礼を受けた、締め切りを守ってくれない強面の先輩から仕事を刈り取ることとか、敵対的な関係者と色々と交渉していくという経験の中で培える力だと思います。そして、英語がそこそこできて、かつ②もできるというのは多少レアかつ、有用なスキルセットであるようにも思うので、省庁で海外系の業務を志向する方は参考にしてみてください。面接ネタとしては、海外で理不尽な目に会いかけて交渉でなんとか切り抜けたみたいな話が実務に通じるネタだと思います。
 これがもう少し進んでくると、サブの世界の話となります。ここでは、専門用語も含めて国際会議でやりとりがされている英語を理解したり、短い時間の中で、議長声明の文言の修文案を出したりする力が重要になってくると思います。
 また、サブの世界になると大臣等政務と動くことも多くなると思います。この時、政府の担当者(行政官)が簡単な同時通訳もできるようになると、対応力が大きく向上すると思います。なぜなら、国際会議の会場が狭い場合は、HOD +1(大臣等の政務1名 +随行1名)みたいなことも多く、これに同時通訳をやるために通訳者を二人追加で入れてくださいみたいな交渉を事前もしくは現場でやろうとするのはかなり大変だからです。また、通訳を通して話すより、英語で発言できた方がクールなので、自動翻訳機が実用化されるまでは、英語力を研くことには意味があると思います。
 あと、ルールの現場での変更を相手に迫る際には割と法的な考え方が効いてくるようにも思います。名のある国際会議の担当者であっても、ロボットのような対応に終始して、「世界を変える前に、この会議の無意味なルールを変えろ」と言ってしまったりする時もあるのですが、ルールを変えようとする時に、「そのルールの主旨は会場の安全を確保することであり、今から入れようとする人間は日本の公用パスポートを所持した国家公務員であり全く安全な人物である。だからナンセンスなそのルールを今すぐ変えろ」みたいに言っていく際にはリーガルマインドも重要になってくると思います。なので、公務員試験で法律とかを勉強するのは意味があると思います。
 以上、引き続き英語力と法的思考力の強化に励んでいきたいと思います。