2019年10月13日日曜日

中小企業の統合について

デイビットアトキンソ氏の国運の分岐点について、
氏の分析はいつも目から鱗で、
勉強になります。

本書の主張を要約すると、
生産性向上のため、
中小企業の統合が必要であり、
最低賃金を年間5%のペースで引き上げ、
中小企業優遇策も縮小すべき、
となるかと思います。

気になるのは、
人口減少下で、人材の取り合いが起きれば、
企業は自然と賃金を上げるはずで、
それが起きないのは、
新しい技術が人手の必要性を低下させ、
グローバル化が、
人材の海外調達を可能にしたためでは、
ということです。
賃上げは生産性の向上に寄与しうる一方、
空洞化も促進させるのではないでしょうか。

あとは、中小企業統合の代案としては、
シェアの推進もあると思います。
オフィスや生産設備をシェアする形で、
擬似的に企業統合を進めれば、
よりスムーズに移行を実現できそうですが、
効果が限定的となり、
政治的なモメンタムも生みにくそうです。

日本は銀行をどのように統合したのか。
ここら辺はすでにありそうですが、
その時の施策と比べても、
賃上げがベストな施策でしょうか?
このあたりについても、
知りたいと思いました。

あとは、人口減少下で賃上げを進め、
強い大企業と少ない中小企業の国として、
韓国があげられると思います。
本書では急激な賃上げを進めているので、
日本との比較対象にならない、
とされていますが、個人的には、
同氏の手による、日韓の比較分析も、
読んでみたいと思いました。

韓国では賃上げにより、
雇用問題が深刻化していますが、
韓国においても少子化は進行しています。
要因は、賃上げの急激さでしょうか?
韓国の大企業は、一般に狭き門で、
多くの学生を採用していおらず、
これが韓国の就職が極めて厳しい一因だと、
理解しています。

国運の分岐点

2019年10月7日月曜日

ライドシェアとタクシー業法

"I'm Grab driver!"
ベトナムを歩いていると、
こう言って話しかけてくる、
緑色のTシャツを来た人によく出会った。

また、南米のコロンビアなどでは、
正規のタクシー免許を持ったドライバー以上に、
ライドシェアのドライバーの需要が高いという。

レイティングシステムというイノベーションが、
免許制度を意味のないものにしつつあり、
制度整備が日本ほど進んでいない、
南米や東南アジアで、
急速に進行していると思う。

南米においては、
ウーバーのようなライドシェアの会社が、
アマゾンみたいな物流の世界にも進出して、
人々の生活をよりクールで、
ワクワクするものに変えているようだ。

また、この流れは、エコでもあると思う。
日本のnottecoが行った調査では、
ライドシェアにより、
CO2排出を58トンほど削減できたとか。

ライドシェアが流行ると、
既存のタクシー業界には打撃となり、
車も今より売れなくなる可能性がある。

でも、その一方で、CO2の排出を削減し、
特別な免許なしで、
人々が副収入を得られるようになり、
新しいビジネスを育て、
人々も、車種とかドライバーとかで、
乗る車を選べる社会を築くことができる。

タクシー免許なしでも行えるライドシェア、
これを推進する政府部局がないなら、
環境の観点から乗り出して行くべきではないか。
この分野の研究を進めたい。

※Notteco、CO2削減量が58トン
https://cp.notteco.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/05/2016-08-31_notteco-press-release.pdf

※自動運転タクシーでGHG94%減
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/070800176/

※東南アジアのライドシェア、Grab
https://www.stockclip.net/notes/5999

2019年9月28日土曜日

変革期

日本には二つの顔がある。
一つは、伝統を大切にし、変わらない国。
もう一つは、その時が来れば、瞬時に変わる国。

2100年、日本の人口は6000万人になる。
1800年、江戸時代の人口は3000万人。

人口が急激に倍増する過程、
1800年代から1900年代にかけ、
明治維新が起きた。

2000年代から2100年代にかけ、
日本は急激に人口が半減する時代を迎えている。
もう一度、社会を大きく変えるのは、今だ。

今日は、一つの社会の在り方を提案したい。
この社会は三つの要素からなる。

一つは、wait less。
誰かの許可はもういらない。
資格や免許制度を徹底的に撤廃し、
やりたいことを、今すぐできる社会をつくる。

一つは、goods less。
お金や、様々な情報が印刷された資料。
これらを全てデータ化する。

一つは、border less。
国境に囚われるのはやめ、世界の目線で考える。
アジア地域の再エネを最大限活用する。

wait less、goods less、border less、
これらの三つの要素で構成される経済的を、
Less Economyと名付けたい。

この経済を実現するため、
GPIFやサンドボックスを徹底的に活用し、
テクノロジーの活用を抜本的に進める。

Less Economy、
ブロックチェーンや人工知能等を活用した、
社会変革の先にあるのは、人口6000万人。

豊かな文化と多様性に彩られた、
懐かしい未來だ。

2019年8月28日水曜日

ベトナムと韓国

夏季休暇を利用してベトナムに行ったら、
韓国の人々の多さに驚いた。
日本語版のメニューがないレストランでも、
韓国版のメニューなら置いてある。
直行便も、日本より遥かに多い。

韓越FTAの影響もあるように思うが、
韓国とベトナムは、特に対中国という観点から、
地政学的な位置が似ていると思う。

例えば、両国は中国から支配を受けた歴史があり、
現在においても領土問題を抱えていたりする。
南北が統一された暁には、新たな国家も中国と国境を接するようになる。
この点で、ベトナムと中国の関係を見ておくことは、
例えば高麗連邦のような新国家が出来た際に、
その国家がどのような動き方をするかの、一つの参考になるのではないかと思う。

近年、韓国では対中シフトを加速化させようとする動きが相次いでいる。
GSOMIA破棄までの一連の流れを見ていると、
ムン政権は鼻から対中シフトを加速化させる目的で、
最高裁長官を変え、徴用工判決に不作為を貫き、
レーダー照射や不買運動を通して、
日本のせいだと言いながら日米同盟関係からの離脱を進めてきたようにも見える。

この流れで行くと、
現在凍結されている在韓日本企業の資産が競売にかけられるのも時間の問題で、
かつ、それに対して日本が例えば関税引き上げ等の対抗措置をとって、
今でも十分に厳しい韓国経済が打撃を受けた場合、
中国から何らかの経済支援を得るという取り決めを、
実は結んでいたりするのではないかと勘繰りたくもなる。

韓国では、賃金引上げ、労働時間の短縮をムン政権下で急速に進めた結果、
以前から深刻であった若年雇用問題が更に深刻になっている。
また、韓国では、ドイツ国債に関連したデリバティブが、
大きな損失を出したのではないかとのことで、政府の査察が始まったという。

韓国の不動産に関しては、例えば2年間契約の物件で、
契約はじめに敷金のような形で2000万円払えば、
月々の家賃は払わなくても、退去する際にその2000万円が戻ってくる、
チョンセという仕組みがある。
これは結構人気で、例えば新卒の社会人や若い夫婦なんかも、
銀行から借り入れを行なってチョンセを活用するのが一般的なようだ。

この仕組みは、土地が値上がりして行くことを前提に、
不動産のオーナーが受け取ったチョンセを土地への投資等に活用して、
二年後はそれを転売等してチョンセ返却後の差益をとることを前提にした仕組みだと思うが、
一旦土地の値段が下がりだすと、
銀行への借り入れを返せない人が続出する危険性もあるのではないかと思う。

先程のデリバティブの損失で銀行のバランスシートが毀損した結果、
銀行のオーナーに対する借入金返却の督促が強まったのか、
最近は、以前は容易に出来たチョンセの更新も、再度まとまった額のお金を払うよう、
大家が賃借人に求めるケースも出てきているようだ。

日本としては、遠からず韓国が懲用工判決で凍結した日本企業の資産を、
現金化することに備えつつ、仮に現金化されそうになった場合も、
韓国政府が日韓請求権協定に則り、
日本企業に代位して損害賠償の支払いを行うよう求めたり、
既に韓国内で提起されている同様の訴訟への期待を表明するなどすることで、
懲罰的関税の引き上げといった対抗措置の実施は、
少し様子を見つつカードとしてとっておくというスタンスで良いのではないかと、
個人的には思う。

なぜなら、そのカードがトドメとなって韓国経済が深刻な打撃を受け、
それを例えば中国が現在韓国に対して課している、経済措置の解除などを通して、
救済するなどすれば、韓国の離日・対中シフトが益々加速してしまうと思うからだ。
ただでさえ、ぐらついている韓国経済をつついて、
日本のせいだと批判する口実を与えないようにして行くという配慮が重要だと思う。

話を冒頭に戻すと、現在のベトナムが中国にべったりかというと、
必ずしもそうでないし、
中国と連合を組んで例えば、マレーシアを圧迫するといった行動はとっていないと思う。

また、歴史的に見ても、大陸勢力が日本に侵攻してきたのは、
元寇の時くらいで、しかもそれは漢民族主導ではなかったのではないかとも思う。
日本と中国大陸の歴史を見ると、どちらかと言えば、大陸勢力の膨張を恐れた日本が、
先制攻撃的に出兵して反撃にあったケースが多いのではないかと思う。
かつ、この場合も、
大陸勢力がその後海を越えて日本を圧迫しに来たという事態には繋がっていない。
(白村江の戦い、文禄・慶長の役、日清戦争、(朝鮮戦争))

なので、仮に朝鮮半島が統一されても、
既存の漫画のストーリーに沿って、”民族の核”が日本を向くようなるといったことを、
過度に恐れて行くべきではないと思う。

むしろ、南北統一を経ていない現在においても、日本は核保有国に囲まれており、
そのミサイルの射程は日本を捉えているので、
南北統一が殊更ネガティブなファクターになる訳ではないのではないか。
(例えば、民主国家同士は戦わないという理論もあったりするので、
統一朝鮮が、民主制を維持した場合、朝鮮半島が日本に加える安全保障上の圧迫は、
今より減少すると見ても良いのではないだろうか。)

勿論、過去のパターンが将来も繰り返されるという保証はないけれど、
少なくも過去の歴史と、ベトナムなど、地政学的に韓国と類似性のある国が、
周辺国に対してとっている外交政策をみると、統一朝鮮が日本に対して、
敵対的な立場をとる、という言説とは、
異なるシナリオを考えて行くこともできると思う。

韓国ではアン氏や、チョ氏など、
大統領候補と言われて来た人にスキャンダルがあった結果、
次期大統領候補としては、ムン大統領とも対日の歴史問題などで立場の近い、
弁護士出身のパク・ソウル市長が有力なのではないかと思う。

パク市長が次の大統領となった場合、
現在の韓国政府の日本政府への立場は基本的に変わらないようにも思うが、
日本としては、引き続き、
徴用工判決が信義則を理由として時効主張を排斥していることを、
批判したりすることで、戦略的に対応を続けて行くことが重要なのではないかと思う。
(個人的には、ムン大統領が秘書官を務めていた盧武鉉大統領時代にも、
徴用工問題は提起可能であったはずなので、
信義則を理由に時効の主張を排斥するという、
韓国最高裁の主張は、かなり無理筋で、
もっと批判されても良いのではないかと思う。)

以上、安全保障は門外漢ではあるが、
日韓関係に対する前向きな政策を記述した本も出版されることに期待しつつ、
2020年4月の地方統一選挙の結果を注視していきたい。


2019年6月29日土曜日

G7、G20、Abu Dhabi

■G7(フランス)
・G7では、フランスの外交術を体感した。3日間くらい深夜まで交渉して、大事なところ
 は大臣会合初日の夜に。
・大臣会合初日夕方から交渉をやると思いきや、コンサートとディナーパーティーがある
 から全員行くようにとのフランス指示で一同懸念の面持ちでコンサートへ。
・コンサートはとても良く、また、コンサートが終わった直後に素晴らしいワインと食事
 が振る舞われ、一同非常に上機嫌となる。
・食事後の23時くらいから事務方集合のアナウンスがあり、一同会議室へ。これまでの
 疲れとワインの余韻も手伝って後回しにされていた、難しい案件がするすると決まって
 いく。フランスの外交術は凄いと思った。

■G20(日本)
・バイの連絡は関係者も多く、戦場のような状況に。ホワイトボードとラインをフルに活
 用して捌きまくる。
・1年くらいやり続けた事前の綿密な交渉と、バイ会談の成果もあってか、途中無理かも
 しれないと思われたコミュニケがなんとかまとまる。
・EUが一枚岩でない(土壇場で崩れる時がある)のと、トルコが意外と厄介な存在感を放
 ってくることを学んだ。個人的には、G7よりカオス感があり、面白く、会合が続くと良
 いのにと思った。

■IRENA(アブダビ)
・気候変動対策に紐づけられる再エネの普及に取り組む国際機関の理事会出席のため初め
 ての中東へ。IRENAもベンチャーのようで、かつ、途上国に軸足を置く面白い組織だと
 感じた。また、再エネの普及が格差の解消、農業の振興、経済政策全般の転換と併せて
 議論されているのに魅力を感じた。
・会議の雰囲気は学生時代にやっていた学生団体の総会のような雰囲気で、自分も事務局
 プレゼンや他国の発言に被せるように応答要領をチューニングしながら話し、議長から
 好意的なコメントをもらうことができ、手応えを感じた。
・また、ラカメラ事務局長が、普段はあまり喋らないけど、締めの演説とかで結構良いこ
 とを言ったりするのは好印象だった。


■今後に向けて
・環境外交は成長産業だと思う。この分野で、国際機関の頭を張れる人材の育成もこれか
 らは重要であり、自分もそうなれるよう、英語力やマネジメント力を鍛えて行きたいと
 思った。
・海洋ごみを回収してそこから燃料をつくっていくプロジェクトや、アジアスーパーグリ
 ットを実現するためのプロジェクトにIRENAが乗り出してくれると良いと思いつつ、夏
 の間に一度頭をリフレッシュして行きたい。

2019年3月2日土曜日

生産性の向上策について

デイビットアトキンソン氏の「日本人の勝算」を読んだ。
同氏の著作にはいつも気づかされること、考えさせられることが多いのが、
今回はいつもに増して海外の論文の紹介など分析が厚く、
かつ分かりやすく記述してあったなのでとても勉強になった。

本の要点としては、少子高齢化を迎える日本が現在の生活レベルを維持するためには、
生産性の向上が不可欠。
そのためには、企業規模の拡大、女性の活躍推進、最低賃金の向上を実施すべき。
この中で、最低賃金の向上は、企業規模の拡大や、女性の社会進出の向上にも効果が見込めるので、
最低賃金の向上を実現すべき、というもの。

その他の点としては、韓国の2018年の賃上げの事例が紹介されていることや、
観光(インバウンド)を通して、宿泊業の「輸出」を実現することも可能とされていたこと、
解雇規制の緩和と生産性の向上には相関性がないといった点が指摘されていることが興味深かった。

一点、WEFの人的資本ランキングを引いて、日本は4位、韓国は32位としているところが気になった。
韓国は兵役もあるので、男性陣の体力はあると思うし、大卒の学生は日本の学生と比べて、
英語に加えて第二外国語にも堪能な場合が多いからだ。

一応調べて見たところ、まず、日本が4位とされているのは、
2016年時点のランキングの話で、直近の2017年のものでは、17位とされている。
これは、計測方法として、女性の労働参加率がより重視されるようになったからだ。
また、2017年のレポートでは韓国のランキングは27位となっているが、
ランクが低い要因としては、韓国の深刻な若年雇用問題が反映されてしまっていることも挙げられる。

また、文中で紹介されたイギリスの事例では、廃業率が高まらなかったという。
これでは、賃金上昇のメリットの一つとされていた企業統合の促進に繋がらないのではないかという疑問が生じたので、
その点については、次作に期待したい。

特に、企業規模が大きい方が一般的に生産性が高いという指摘が興味深かった。
これは、規模が大きい方が、勤怠管理や会計管理で、
最新のソフトウェアを導入するコスパが高いためでもあるのではないかと思い、
納得できた。

ただ、小売業の場合は、規模の小さな会社の方が、規模の大きな会社より生産性が高い場合があるようだ。
また、日本とアメリカやカナダのレストランやホテルのサービスを比べた場合、
日本の方が明らかにサービスの質が高いと感じることが多く、
全くチップを払う気にならないことが多い。
(にも関わらず、カナダにおいては法外なチップを要求されたり、スタバで長蛇の列に待たされることがあったりする。)
だから、日本としては、飲食業や宿泊業においては値段をあげていく余地が大いにあると思う。
また、こうすることで海外観光客からの売り上げも増大して行くのではないか。
この点でも、最低賃金の引き上げは生産性の向上に寄与するのではないかと思う。

また、日本において特に生産性が低いとされているのが卸売業である。
この生産性を向上させる方法についても興味を持った。
さらに、個人的にはキャッシュレス化を進めることが、日本の生産性向上に寄与するのではないかと思う。
例えば、お昼のコンビニの場合、長蛇の列ができているために買うのを諦めたりしている場合があると思うし、
中小企業の場合、結構な時間を売り上げたお金の計算とかに費やしていると思うからだ。
キャッシュレス化が実現できれば逸失利益を獲得し、開いた時間を、マーケティングや、
先端技術の導入のための組織改編、自分自身の学習等に使うことができるようになり、
生産性の向上に繋がるのではないか。

企業統合の促進策、卸売業の生産性向上策、キャッシュレス化あたりについて、
次回作で触れられることに期待したい。
また、若いリーダーの方が生産性向上の実現を行いやすいというのであれば、
企業トップについては、少し早めの定年制を設けることも一手だと思う。