2019年3月2日土曜日

生産性の向上策について

デイビットアトキンソン氏の「日本人の勝算」を読んだ。
同氏の著作にはいつも気づかされること、考えさせられることが多いのが、
今回はいつもに増して海外の論文の紹介など分析が厚く、
かつ分かりやすく記述してあったなのでとても勉強になった。

本の要点としては、少子高齢化を迎える日本が現在の生活レベルを維持するためには、
生産性の向上が不可欠。
そのためには、企業規模の拡大、女性の活躍推進、最低賃金の向上を実施すべき。
この中で、最低賃金の向上は、企業規模の拡大や、女性の社会進出の向上にも効果が見込めるので、
最低賃金の向上を実現すべき、というもの。

その他の点としては、韓国の2018年の賃上げの事例が紹介されていることや、
観光(インバウンド)を通して、宿泊業の「輸出」を実現することも可能とされていたこと、
解雇規制の緩和と生産性の向上には相関性がないといった点が指摘されていることが興味深かった。

一点、WEFの人的資本ランキングを引いて、日本は4位、韓国は32位としているところが気になった。
韓国は兵役もあるので、男性陣の体力はあると思うし、大卒の学生は日本の学生と比べて、
英語に加えて第二外国語にも堪能な場合が多いからだ。

一応調べて見たところ、まず、日本が4位とされているのは、
2016年時点のランキングの話で、直近の2017年のものでは、17位とされている。
これは、計測方法として、女性の労働参加率がより重視されるようになったからだ。
また、2017年のレポートでは韓国のランキングは27位となっているが、
ランクが低い要因としては、韓国の深刻な若年雇用問題が反映されてしまっていることも挙げられる。

また、文中で紹介されたイギリスの事例では、廃業率が高まらなかったという。
これでは、賃金上昇のメリットの一つとされていた企業統合の促進に繋がらないのではないかという疑問が生じたので、
その点については、次作に期待したい。

特に、企業規模が大きい方が一般的に生産性が高いという指摘が興味深かった。
これは、規模が大きい方が、勤怠管理や会計管理で、
最新のソフトウェアを導入するコスパが高いためでもあるのではないかと思い、
納得できた。

ただ、小売業の場合は、規模の小さな会社の方が、規模の大きな会社より生産性が高い場合があるようだ。
また、日本とアメリカやカナダのレストランやホテルのサービスを比べた場合、
日本の方が明らかにサービスの質が高いと感じることが多く、
全くチップを払う気にならないことが多い。
(にも関わらず、カナダにおいては法外なチップを要求されたり、スタバで長蛇の列に待たされることがあったりする。)
だから、日本としては、飲食業や宿泊業においては値段をあげていく余地が大いにあると思う。
また、こうすることで海外観光客からの売り上げも増大して行くのではないか。
この点でも、最低賃金の引き上げは生産性の向上に寄与するのではないかと思う。

また、日本において特に生産性が低いとされているのが卸売業である。
この生産性を向上させる方法についても興味を持った。
さらに、個人的にはキャッシュレス化を進めることが、日本の生産性向上に寄与するのではないかと思う。
例えば、お昼のコンビニの場合、長蛇の列ができているために買うのを諦めたりしている場合があると思うし、
中小企業の場合、結構な時間を売り上げたお金の計算とかに費やしていると思うからだ。
キャッシュレス化が実現できれば逸失利益を獲得し、開いた時間を、マーケティングや、
先端技術の導入のための組織改編、自分自身の学習等に使うことができるようになり、
生産性の向上に繋がるのではないか。

企業統合の促進策、卸売業の生産性向上策、キャッシュレス化あたりについて、
次回作で触れられることに期待したい。
また、若いリーダーの方が生産性向上の実現を行いやすいというのであれば、
企業トップについては、少し早めの定年制を設けることも一手だと思う。