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2013年5月29日水曜日

韓国の中国観~百年後の国際政治を構想してみる

◆外交カードとしての独島、従軍慰安婦問題?
 韓国は中国、日米の間で中立的な立場をとりたい(朝鮮半島統一には中国の協力が欠かせないので)という声は韓国の教授からしばしば聞くこと。
 例えば、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)はアメリカの働きかけにより結ばれようとしたものだが、李明博元大統領はそれをドタキャンした【2012.6.29】。彼はその後、竹島に急遽訪問【2012.8.10】。韓国の新聞は日本の再軍備や歴史問題に対する警戒を指摘する論調で溢れた。竹島、従軍慰安婦等の歴史問題は韓国が日米との間で安全保障面の協力を強化する際の「言い訳」として作用する面があるのではないか。
 もっとも、従軍慰安婦問題の提起(李明博元大統領・野田元首相会談【2011.12.17】)は韓国の憲法裁判所の「不作為の違憲判決【2011.8.30】」に対応したため。独島訪問に関しては、実兄の逮捕【2012.7.11】等のスキャンダルから国民の目を逸らさせるため、もしくはこの全て、と考えることもできる。更に、従軍慰安婦問題等については女性の人権や元慰安婦の方々の救済等、外交上の駆け引きを超えた大義が存在すると思う。

◆韓国の人々の中国観
 韓国の友達の「中国観」を聞いて思うのは、日本とは中国観が違うということ。まず、彼らは「仮に武力紛争がおきれば中国には勝てない」と口をそろえて言う。中国との歴史は日本(元寇来襲や日清戦争で勝利)と韓国(勝ったことはない)では大きく異なる。次に、彼らが言うのは「韓国は明から清、清から日本への権力移行期でつく側を間違ってきた。今回は是非、正しい側を選択したい」と。
 (ちょっと話は変わるけど、ソウルの入国管理局(Immigration Office)には中国人専用のフロアがあったりして、ビザ申請を行おうとするその他の国から来た外国人とは扱いが違う。日中韓の外交官との昼食会で韓国の教授が中国の外交官に妙に低姿勢な発言をしていて違和を感じた時があった。)


◆百年後はインド、いや、真の「アジアの時代」?
 これに対する僕の応答は、「百年後も中国が世界で最大の経済大国だと思うか?」だ。中国は、今後五十年は発展するものの、急速な高齢化等が足かせとなり、徐々にインドに経済的な地位を譲ることになるのではないか。
 インド人の友人曰く「別にアメリカは好きでないが、中国は領土問題を抱えており嫌い。むしろ好きなのはロシア、フランス、イスラエル。」百年先は世界最大の民主国家であるインドの時代だとしたら、今後50年は日米韓同盟を強化して中国の安定的発展とアジアの平和を守り、インドが台頭した後に真の「アジアの時代」を創るという構想を描いても良いのではないか。
 そして、その時に日韓がリーダーシップを取るべきは、環境や厚労分野の社会的課題を率先して解決することだと思う。(技術が得意な日本は環境、儒教精神でお年寄りを大切にする韓国はヘルスケア等、棲み分け?)


◆その他、捕捉
 ※1、アジア派(?)の僕としてはアジア地域の平和は是非守りたい。しかし、同時に、日本の地位や独立も確かなものとして後世に引き継ぎたい。
 ※2、ちなみに、最近、竹中平蔵氏の翻訳により出版された「2052(ランダース)」では、環境問題解決の重要性と中国の政治体制の自由民主主義体制に対する優位性(多少国民が反対しても環境に良い政策を実行しやすい)を指摘していた。確かに、中国人の友人の中にも環境問題に強い関心を抱く者がいる。中国が長期的に発展しない可能性がないわけではない。(中国の高齢化の原因である一人っ子政策は現在、緩和されつつある。)


◆参考
「中国に立ち向かう日本、つき従う韓国」
「2052」


2013年5月21日火曜日

従軍慰安婦問題について考える

◆はじめに
 ソウル大学の授業で習ったことを参考に、従軍慰安婦問題に対して日本国内で行われている議論を考えてみたい。

◆問題の大局
 海外に出てみると、僕も含め、多くの日本人の強みは細部をしっかりとつめるところにあると思う。逆に言えば、大局的な観点から問題の根幹を見極めることは、韓国や中国の学生の方が長けていると感じるときがある。日本人には細部が目につきすぎるせいか、時に大局を見失いかねない弱点があるのかもしれない。

 従軍慰安婦問題に関する一部の議論についても同様の懸念を感じるときがある。この問題の本質として、最も重要かつ大きな部分を占めるのは、元慰安婦の方々が慰安所で体験されたことだ。ここで彼女たちは、帰ることも、「慰安」の拒否が受け入れられることもなく、1日に10人から20人の相手との性行為を、数年間にわたって続けなければならなかった。従軍慰安婦問題の内外の議論に関しても、この点を否定するものはほとんどない。

 では、最近メディアを賑わせている「狭義の強制性」という議論はどういうものか。これはさらに、募集期の強制性と移送期の強制性にわけられるのだが、僕も含め一部の日本人が気になるのは、募集期の強制性である。主張を要約すると、「全ての元慰安婦の方々を日本軍が強制連行したわけではない」ということだ。
 元慰安婦の方々の証言や元兵士の証言等を総合すると、元慰安婦の方々の募集経路は①強制連行(特に東南アジアや中国)②軍服工場で働く等、良い仕事があると騙された③経済的理由等から不本意ながら志願した、などがある。正確な数字や割合は明らかになっていないが、元従軍慰安婦の方の証言や兵士の証言から考えるに、この中で最も多いのが②、次に多いのが①、そして残りが③と思われる。
 国際社会では、ほとんどの元従軍慰安婦の方が①強制連行によって「募集」されたと認識されているように思われる。これに対し日本人として、「それは違うのでは?大半は軍による強制連行でなく、②軍の委託を受けた民間業者による騙取では?」と訴えたくなるむきがあるということについては否定しない。

 ただ、狭義の強制性の問題は全体の問題状況から見ると枝葉の論点であるということが意識されるべきだ。また、騙取であっても大きな意味での強制性の範疇を出るものでないということも重要である。

◆解決がいそがれるべき課題
 戦後、日本はこれらの元従軍慰安婦の方々に対し、アジア女性基金の活動を通して、首相からの謝意を伝える手紙の受け渡しや人道的観点からの償い金の受け渡しを行った。東南アジア、台湾、オランダ等ではこれらの事業は一定の成果をあげたようである。
 ただ、外国人の元従軍慰安婦の方々の中で最も大きな割合を占めていたはずの韓国においては、アジア女性基金の活動はごく一部でしか受け入れられなかった。

 韓国側が問題としたのは、①手紙ではなく、謝罪決議や談話等の公式の謝罪を求める。②政府と民間共同出資の人道的賠償でなく、全額政府出資の法的賠償を求める。の主に二点である。
 現在存命の韓国人の元従軍慰安婦の方は65名ほどいるとのことだ。狭義の強制性や法的/人道的賠償の議論を超えて、彼女たちが存命している間に何ができるかという議論がなされるべき時ではないだろうか。

 政治的に難しいのかもしれないが、国会での謝罪決議や首相による新たな談話の発表とアジア女性基金のような形での人道的賠償の再開は日本が最大限取りうる譲歩の形であると思う。韓国の多くの方々にもこの点を理解してもらい、日本の保守層にも我々が問題としているのは全体の問題状況からみてどれ程重要な問題なのかを理解してもらいたい。その上で、請求権条項など、日韓両国で問題となる条項を回避しながら双方にとって納得のいく妥結案を実行できるよう願いたい。そして、そのことが東アジアの未来と日本の未来を考えた上で、愛国者がとるべき日本の針路であると僕は思う。

◆参考
 アジア女性基金のウェブサイト

◆キャンパスアジア雑感
今日、中国のキャンパスアジアのメンバー全員を、
韓国人のキャンパスアジアメンバーお勧めの店に案内した。
半ば酔いながらも、中国の教育を論じ、中国の更なる発展を論じる彼らに、僕は好感を持った。

一人で靖国を参拝する日本のロジックを説き、中国人5人を飲みにつれて行った僕が思ったのは、
やはり東アジアの平和を守るべきだということである。

力の支えなくして、もちろん強国と対等な立場で日本の平和を守ることはできない。
しかし、貞観政要によると、軍事力の最も重要なポイントは抑止力であって行使ではない。

日本も、制宙権、制空権、制海権等の抑止力拡充に力を注ぎつつも、
その力の拡大に抑制を加え、その行使を最大限管理して、主に外交により問題の解決を図る。
これが、日本が目指すべき防衛外交政策であると思う。

2013年5月2日木曜日

靖国・領土 中韓の学生はどう考えるか?

ソウル大の国際関係大学院では毎週一回、国ごとのランチミーティングが開催されている。
今日のチャイニーズテーブルのテーマは日本の靖国神社参拝と領土問題。
(以下、中国と韓国の学生との議論の議事録です!)

①日本の政治家はなぜ靖国を参拝するのか?
・植民地時代を正当化するためではないか。(韓国)
・自国の民族主義を高めることが狙いではないか。(中国)
・政治家が靖国神社を参拝する理由は、自分たちより強大であったロシアやアメリカと戦った記憶を国民に喚起させるということ。現代の状況にあてはめれば、日本の安全保障上の脅威は中国であり、ホットなのは尖閣問題。参拝のメッセージは、中国の台頭に対しても、理に沿わないことがあれば、日本は毅然と立ち向かうということだと思う。

・靖国の記念館の掲載物の内容は戦争を美化するものが多いがなぜか。(中国)
・靖国記念館の掲載物の内容は日本の主流派の意見を代表するものではない。むしろ、少数派の見解を示すものであり、基本的に政府のコントロールを受けていない。

・日本の多くの人は靖国参拝をどう考えているのか。(中国)
・中国や韓国の批判を理由に日本のリーダーが参拝を行わないというのは、クールじゃないということ。この問題に対して、韓国や中国の主張を踏まえて考えている人はそんなに多くない。(※この点に関しては、国内でも意見が割れていて、靖国神社に祀られている兵士に敬意を表してほしいと願う方々がいる一方で、近年の靖国関連訴訟にあるように、自分たちの家族を合祀するのをやめてほしいと考えている方々もいる。)

・日本の歴史教育を変えることは可能か。(中国)
・不可能ではない。難しい歴史問題について、学生が日本と諸外国の双方の立場を勉強するのは大切なことだと思う。

②尖閣や竹島を始めとする領土問題にどう向き合うか?
・精神的な問題である靖国と違って、尖閣には資源という実益が絡む。近いうちに、空母が尖閣に向かうことになるだろう。(中国)
・また、以前と違って、世界は中国の言葉をより聞くようになっている。(中国)
・中国のソフトパワーは高まっているので、むしろ挑発を差し控えるべきではないか。(中国)

・韓国は領土問題について中国と立場が近い。ICJに行くという提案は受け入れ難い。竹島に関する条約等では日本に有利なものが多く、ICJでは韓国に不利な決定が下される可能性が高いからだ。しかし、法的文書のほぼ全ては力のなかった韓国が日本や国際社会に強制される形でつくられたもの。正義は、わたしたちにあると思うし、それがICJで覆るとしたら耐えられない。それに、実行支配の法理等の西洋の慣習をベースとするルールは、アジアの領土紛争には適用できないのではないか。(韓国)

・竹島の二島(西島、東島)を日韓で一つづつ分割することを授業で提案してたよね。個人的にはその意見は検討する価値があると思う。(韓国)
・僕の意見は日本ではかなり少数派だけどね。(一同笑い)

・私は、やっぱり独島は韓国の領土だと思うけど、議論していくことで少しづつ自分の立場をニュートラルなものにしていけるよな気がする。(韓国)
・第二次世界大戦や歴史問題に対する日本の立場をはじめて聞いた。良い、悪いを判断する前に、まずはお互いの主張を理解することが大事だよね。(中国)
・実は中国は尖閣問題を棚上げにしておいて欲しいと思っている。この問題は、南沙諸島や台湾やチベットなどの国内問題とも繋がっている。日本の姿勢を東南アジア諸国が注目している。また、尖閣には台湾も絡んでいるから、中国としては扱いにくい問題なんだよ。(中国)

※関連1;「一流の国、日本」という観点から靖国神社参拝や政治家の姿勢について考える。
※関連2;Japanese people's perception of WW2 and Yasukuni Shurine

Yasukuni Shrine―How Japanese people percept WW2 and the symbol?

  First, knowing each other’s view toward WW2 is step for creating common perception about history and mutual understanding.

◆How Japanese people percept WW2?
 -Asian countries; Victim
  Many Japanese people think colonization is basically wrong.
  But this is not only wrong for us but also other countries colonization is wrong.


 -US and Russia; Competitor
  Before WW2, there was era of expanding colonization.
  And in Asia, Japan expanded our colony by spending huge blood of Japanese people.
  But Russia and US also wanted to get the interest of Japan, so finally we had to fight for protecting our interest which we got more earlier than them.


◆What kind a people are in Yasukuni Shrine?
 -How to dead
  1) During the fight against resistance of Asian Countries
  2) During the fight against Russia and US
  And category 2 people are far more than category 1.So, main motivation of going Yasukuni is not for praising colonization.


 -What they did
  1) Missing strategic decision; A class criminals were leader of Japan during WW2.
 2) Murder and Rape; Some soldiers broke the rule of Japanese Army.
  3) Nor miss judged, nor broke Japanese army rule, just fought for protecting our country, belief and who they loved.

 -For whom we have to pray?
  It is wrong to show respect toward cotegory1 and 2.
  But it is natural to show respect to the person of cotegory3. They didn’t commit murder and rape in severe situation. And they kept fighting even rival was stronger than us.


◆Tension between domestic Japanese and international Japanese?
  I think Japanese politician’s action will give damage to Japanese people who live in abroad or business in abroad. The thing which Japanese politicians who went to the Shrine have to do is explaining their logic to international society and also to Japanese people.


※Japanese ver ; http://ksi-lucky.blogspot.kr/2013/04/blog-post.html

2013年4月26日金曜日

靖国神社参拝を考える

◆本質的な批判
国を守るために戦った方に敬意を表するのは正しいとして、
①虐殺や強姦を行った方
②重大な意思決定上の過失を犯した方
に対しても敬意を表すべきかということ。

靖国神社の問題点は①②の行為を犯していない、
純粋に国や家族を守るために戦って亡くなった方と、
①②の行為を行って亡くなった方が一緒に祀られていることだ。

更に進むと、国を守るために死んだのであれば、
①や②の行為を行っても許されるとする考え方を、
より良い国を創るために継承すべきかということだ。

僕は日本には一流の国になってほしいと思う。
一流の国であれば、軍規を乱した兵士に敬意を表するだろうか。
一流の国であれば、判断を誤った指導者に敬意を表するだろうか。

一流の国であれば、上記二者に対しては厳しい批判を行いながらも、
そうでなく純粋に国を守るために戦った方々に対しては敬意を表するものだと思う。

◆戦後から受け継がれている課題
戦後日本は、上記の区別をきちんと行わずに来た。
これについては与党であった政党の不作為が問われるべきだ。
更に、近年においては首相や国会議員の有志連合が公式参拝を繰り返していることである。

この実害としては周辺諸国との協力が阻害されると共に、
アメリカを始めとする同盟国から、アジアの安定化や北朝鮮への関与について日本は
国際社会と一致して政策を進める気概があるのかという不信感を抱かれること。
このような外交上の損害が生じることである。

靖国神社に参拝した政治家から国内及び国際社会に対して語られるべきは、
①②の方に対しても、敬意を表することが許されると考える理由であろう。
更に進んで、第二次世界大戦を日本がどのように評価しているのかということをはっきりと語って、
国際社会との合意形成を行うことであろう。

かかる点をあやふやにしたままで、なし崩し的に参拝を繰り返すのは、
一流の国、日本を創るためになすべき行為ではないと思う。
また、今は北朝鮮に対して北東アジア諸国が団結して向き合うべき時ではないだろうか。

◆日本を離れて生活してみて
 靖国神社参拝は、国内向けには選挙対策上のアピールなど、一定の効果をあげられる行為かもしれない。しかし同時に、国際社会でビジネスを行う方や生活を行う方には決してプラスには働かない。
 バス停で日本語を話していると「3.1独立運動の前後に日本語を話すのはやめるべきだ」と注意されたり、レストランでガンをつけられたりといった経験が以前より増えたと感じる。もっとも、話し合おうとする方に対しては日本の立場を丁寧に説明し、偏見を持って接してくる方には気合で返すことで対応するので問題はないと言える。ただ、中国等では状況はさらにひどいと聞く。
 「何々人」というカテゴリーに対して敵意を向ける行為は、見識のある行為ではないだろう。個人によって考え方は様々であり、それに対して議論するなり批判するなりを行うべきだ。これは、日本国内の一部の人にもあてはまることだし、そのような行動をとる人ほど、問題について限られた理解しか持っていないと思えてならない。

※関連1;中国や韓国の学生の靖国神社参拝・領土問題に対する考え方
※関連2;For foreign reader, "How Japanese people look WW2?", brief introduction.

2013年3月30日土曜日

尖閣諸島 日中双方の主張

 日中双方がICJに領土問題を提訴したらどのような主張をし、どのような判決が下るのだろうか?これまでの日中双方の主張をまとめながら考えてみたい。

◆1歴史(中国側立論)
 双方とも歴史上尖閣諸島は自国の領土だと主張する。ただし、この歴史がいつを起点とするかは日中双方で異なる。日本の場合は尖閣諸島を編入した近代を起点とする。一方中国は古代を起点とする。
 中国は多数の古文書を持ち出して尖閣諸島の存在を古代から認識しており、自国の領土と考えてきたと主張する。これに対し、日本は一つ一つの古文書の解釈や信憑性に疑義を提起するだろう。
 この点に関しては、「日本より先に中国は尖閣諸島の存在を認識していた(場合によっては+自国領と考えてきた)」という主張をICJは認定するのではないか。


◆2国際法;実効支配の法理(日本側立論)
 しかし、領有権を決める上で重要となるのは、当事者のうちいずれが先に実行支配を確立したかということである。島の領有権に関わるICJ判決や仲裁判決の多くは実行支配の法理に基づいて出されており、本件でも当法理が適用される可能性が高い。
 この場合、「島に人が住んだ」とか「施政権を及ぼした」などが実効支配確立を判断する基準となる。この点、日本は1895年の編入から人が住んだり、施政権を及ぼしたりしており、1895年以降の実行支配がICJで認められるだろう。
 そこで、いくら中国が上記の歴史上の反論を行ったとしても、①「ICJが実効支配の法理を本件に適用しない」②「中国が日本より先に実効支配をしたと立証する」かのいずれかがない限り、最終的にはICJは日本の尖閣諸島領有を認めることになると思う。


◆3ポツダム宣言受諾による日本側の領有権放棄(中国側立論)
 中国はまた、(仮に1895年以降、一時的にも日本が同島を「不法」領有したとしても)カイロ宣言及びポツダム宣言の受諾により、日本は尖閣諸島の領有権を放棄したと主張することが考えられる。しかし、同宣言によると、日本の領有権が及ぶ範囲は「連合国により決定される」とある。戦後、アメリカは日本に尖閣諸島を返還した。そして、僕が知る限り、これに対してイギリス、フランス、ロシアが反対の立場を表明したことはない。また、中国も71年までは抗議を行はなかった。さらに、現在も日本が尖閣諸島を実行支配している。
 以上の事情を考えると、「ポツダム宣言受諾による放棄」という主張がICJで認められる可能性は低いのではないか。


◆4追認もしくは有効な反論の欠如(日本側立論)
 国際法上、紛争地の実効支配を相手に奪われた場合、それに対する抗議をしなければ、後でその領有権を争うことができなくなる。この点、「国家レベルでの抗議」や「ICJへの提訴に類する行為をしたこと」がこれを為したかどうかの判断の基準となる。本件において、僕が知る限り、中国は1895年から1971年まで上記の抗議を行っていない。
 以上から、中国が抗議を行ったこと、(もしくは抗議を行はなかったことが同法理の適用を正当化することにならないという特段の事情の存在)を立証しない限り、中国はICJで本件を争うことができないという判決が出される可能性もあると思う。


◆5実効支配の法理の検討
 ICJの判例には厳格な意味での先例拘束性はないので、本件でも別の法理が提案されたり、実効支配の法理が適用されなかったりする可能性はあると思う。その場合の予想されるICJのロジックは以下の二つが考えられる。


 ①実効支配の法理が植民地獲得と密接に結び付いた法理であることを認定し、日本の植民地支配を否定するポツダム宣言やカイロ宣言とその受諾を引用しながら、日本の植民地獲得期の歴史に関連して生じた領有権紛争(この点も尖閣諸島がそのようなケースにあたるとICJが認定)に同法理を適用することができないとすること。
 日本人としては受け入れがたい判決だが、第二次世界大戦を世界の他の国々の人々や判事がどのように理解するかによっては、このような判決がでる可能性もあるかと思う。


 ②近代以前の東アジア地域に、西洋諸国の慣行を起源とする実行支配の法理とは別の法理が存在したとし、例えば、東アジア地域に関しては、実効支配ではなく、「発見の順番」や「地図等を通して継続的に自国領と認識してきたこと」を基準として領有権を判断するという新たな法理を打ち出すこと。
 このような判決が出た場合、若干ラジカルな影響を国際法やその後の外交交渉に与える可能性がある気がしないでもないが、このような判断(もしくは①②の複合形態の判断)がなされる可能性もあるかと思う。


◆6実際どのような判決がでるか
 ICJが白黒をはっきりつけるということも可能性としては考えられるが、事実整理や実体面の審議と並行して、あえてすぐには結論を出さず、日中双方に交渉による解決を働きかけるということも、ICJのとりうる行動として予想することができる。この場合は、尖閣諸島が複数の島により成り立っていることに注目して、それぞれの島を日本と中国(場合によっては+台湾)で分割して、新たな国境線を引くように提案するということが考えられる。


◆7まとめ
 以上のことは、全て可能性の話にすぎない。しかし、いずれにせよ、問題の解決や緊張緩和のためには、日中双方の人々が両者のロジックや主張する事実を理解し、双方のロジックの弱点や敗訴の可能性を頭に入れた上で、交渉による解決やICJの判決による解決を受け入れる素地をつくっていくことにあるのではないかと思う。


 ※中国人の友達に「ICJ提訴」の話を振ってみたところ、彼は「日本は敗訴してもその結果を受け入れないのではないか?」と言っていた。個人的には、そんなことはないと思う。中国はどうなのだろうか?

2013年1月1日火曜日

北東アジア諸国の国民性から考える日本人の強み、歴史問題

韓国に行って驚いたことがある。
例えば憲法9条の改正議論。

日本にいる時は、韓国や中国などアジア周辺国は
憲法9条の改憲に極めて敏感で、
これを変えようとするなら、大きな反日デモがおきかねない。
そんなイメージを持っていた。

しかし、実際ソウル大学の安全保障の授業で、
同世代の学生と議論してみると、
日本の9条改憲という主張は、さほど反発なく受け入れられる。

特に、兵役を経験して大学院に来ている28歳前後の学生達には、
日本の国際情勢の認識なども交えて説明すれば、
むしろ日本の9条改革を支持してくれた。

自前の軍隊を持ち、国益に応じて海外に派兵を行っている韓国の学生からすれば、
日本も軍隊を持つのは普通のことであり、
そこに戦前に関連するアレルギー反応は見られない、ということかもしれない。

日本にいたころと違ったのは、竹島でも従軍慰安婦の問題でも同様だ。
確かに、学生の間でも日本以上に関心の高い問題であるが、
こちらに理があると思ったことを説くことで喧嘩が生じるとか、
仲が悪くなるといったことはなかった。

日本人として、思うことははっきりと主張していいと学んだ。
しかし同時に、韓国や中国と比べた日本の違いも認識した。

僕は、北東アジアの人々と比べると日本人は抜群に論理的、もしくはきめ細かいと思う。
これは、中国や韓国の学生とグループ発表をやるなどの経験を通して感じたことだ。

日本人は基本的に物事の繋がりに敏感で、筋が通らないことを認めない傾向が強い。
これは一握りの人がそうというわけではなく、日本人全般に言えることだと思う。
日本人はきめ細かで、物事の繋がりをきっちりと考えていく。

それに比べ、中国の学生は、日本人の僕から見るとよくロジックが「飛躍」する。
しかし、常に大局や本質を見た上で重要なポイントや大きな方向性を示すことに意を払っていたという印象だ。
そして韓国の学生は日本と中国の中間。
適度にロジックを「飛躍」させながらも、クリエイティブ、かつ意思決定のスピードが速い。
(日本人としては、細かいが重要だと思われるポイントを指摘する場合はタイミングに配慮し、
グループの方向転換を主張する時は、できるだけ本質論になるよう説明の仕方を工夫すると上手くいくことが多かった。)

ちなみに、これらの違いは国家運営の方針にもあらわれていると思う。
日本では、何か改革を行う前に、徹底的に問題点を洗い出し、その対応策を検討して、合意形成を行う。
TPPへの対応などもその例ではないだろうか。
これに対し、韓国では「見切り発車」も多い。

例えば、自由貿易協定では既にEUとアメリカとFTAを締結しており、そろそろ中国とのFTAも締結しようとしている。
また、日本よりおそく始まったロースクール制度であるが、ロースクールの数は厳しく制限されており、
新司法試験の合格率は高く、ロースクールが設置された大学の法学部は廃止されている。
(ただし、司法試験合格後の就職難が日本以上に深刻だという話も。日韓とも新司法試験の合格者は約2000人。)
さらに、アジア通貨危機後はIT化の波に乗るために財閥の統廃合によりサムスンやLGを生み出した。
現在の韓国ではWiFiが非常に普及していて、チェーン店のカフェでも登録不要かつ無料でネットを利用できる。
しかし一方で、大企業の一人勝ち構造が生じており、中小企業が弱く、国内の格差が日本以上に大きい。

話を戻そう。
歴史問題の対応についても、国民性の違いを考慮する必要があると思う。
日本人にとって、筋が通らないことでも、
韓国や中国の人からは、
「やたらと細かいことをあげつらい、結局のところ言い訳なのでは」
と思われていることは、慰安婦問題や領土問題の構造とも重なる部分があると感じた。

日本人としては当然つながらないと思えることでも、
国際社会の基準でみると、「つながる」ということはあるのかもしれない。
自分の強みに絶対の自信を持ちつつ、
それを世界標準と思わず、
謙虚に世界の「平均値」を学ぼうとすること。
世界を知り、己を知ることで、自分たちの強みをより効果的に活かすことができるようになるはずだ。

日本人の論理性や緻密性はピカイチだと思う。
主張すべきことは堂々と主張する一方で、
大局観を意識し、時には大きな視点から論理を「飛ばして」みせる雅量とハートも、
これから北東アジア諸国との関係を進める上で、
僕たちが意識していくべきことではないだろうか。

同時に、日本と向き合うことになる海外の方々には、
日本人は感情的だから「細かい」のではなく、
日本人の感覚では「論理的でない」と思うことには納得できない
と主張している場合もある。
ということを理解して頂ければ、話し合いがスムーズになると思う。

困難な課題を乗り越えるためには双方の歩み寄りが必要なはずだ。

そろそろ桜の季節ということで、아침(アチム) - 불꽃놀이 (花見)
※高音質版はこちらの方のブログのlist⇒3曲目にあります。

2012年5月17日木曜日

日中韓FTA、日本は外されるか?

日経ビジネスに『中韓FTA、「日本外し」の衝撃』という記事があったので、自分なりにコメント!
 http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120510/231854/

  少し前韓国で選挙があったけど、与党が勝った。韓国のアメリカよりの外交政策が今後大きく変わるとは思えない。日本とも緊密な連携を必要とするので、韓国としても日本をおざなりにするとは考えにくい(防衛協力が6月までに日韓で締結される予定。個人的にFTAは経済政策であると同時に外交政策と完全にセパレートなものではないと思う)。
また、韓国が北朝鮮の問題を解決するために親中路線に舵を切ったという見方は右派与党のセヌリ党が政権を握っていて李大統領が統治にあたっている現在では考えにくい。

 経済面では確かに韓国には日本を外すメリットはある。ただ、日本とASEANは既にFTAを結んでいるわけで、中国と韓国だけがずっと日本外しをしても影響はたかが知れている。
また、中韓だけでは東アジアに日米を中心とするTPPに代わる経済体制を構築することは難しいはず。中韓にTPPに対抗したいという思惑があるなら、日本とも協力して東アジアのFTA体制構築を目指すべきではないか。

 僕の立場は日本は東アジアFTAの枠組みにもTPPの枠組みにも参加することで戦略上の選択肢を広げ、両者の枠組み作りの交渉の場で強い交渉力をもてるようになるべきだというもの。 アジアの経済体制がアメリカor中国で分断されるのは望ましくないし、それは日本だけでなく韓国も同じように考えているはず。
 最後に、現在のトレンドは日本vs中韓というより、日中韓連携促進の方向なのではないかと思う。

◆関連記事
日韓防衛協力について
http://jp.wsj.com/japanrealtime/blog/archives/11071/
日中韓の国際交流促進について
http://japanese.joins.com/article/098/152098.html
集団的自衛権行使に向けた憲法解釈の変更提言
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS06036_W2A700C1PP8000/
防衛協定の締結延期について
http://japanese.joins.com/article/663/154663.html?servcode=200&sectcode=200

◆最近思ったこと
 上にあげた防衛協定は延期となった。この背景には韓国側が中国に配慮したということ。また、過去の歴史に起因する日本に対する警戒感が強かったということがあげられると思う。最近日本は中国と尖閣の課題が浮上してきているし、韓国との防衛協力も頓挫し、ロシアも北方領土での活動を活発化させている。民主党は現在、憲法9条の解釈変更を検討している。なかなか東アジアの国際関係は緊迫化してきていると思う。
 安全保障の問題をコントロールするためにも、一人一人が落ち着くことが大切だ。俺も安全保障についての勉強を進めながら、自制心を持って現実と向き合い、課題の解決策を模索していきたい。お互いのプライドがかかることでもあり、領土問題については、国際法や歴史を持ち出して法的に解決するには限界があるのではないか。ロシアと中国のように交渉により領土問題を解決することを、日本ももっと推進していくべきではないか。そのためにも、俺たち一人一人が自国に対する誇りと共に相手の国の方々の誇りにも配慮する国際感覚を身に着けていくことが必要だと思う。
 なかなか大変だが精進あるのみ!まずは中国政治のレポートがんばれ俺。

◆まったく関係ないけどmove like jagger

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