2017年4月2日日曜日

パリ協定における中国の存在感

トランプ政権が温暖化対策に対する後ろ向きな姿勢を示している。
欧州ではイギリスのEU離脱にむけた交渉が始まり、
フランスの次期大統領となる可能性があるルペン党首は、
EUからの脱退を掲げている。

2009年の時点で、環境物品の輸出ランキングは、
1位ドイツ、2位中国、3位アメリカ、4位日本であった。
https://www.insightnow.jp/article/5753
アメリカがパリ協定に対して後ろ向きな姿勢をとり、
欧州でも離脱国の増大等の混乱が続けば、
今後の気候変動関連の国際交渉でプレゼンスを示すことは難しくなるのではないか。

その時、世界の環境政策で発言権を持つ可能性が高いのは中国だ。
中国は国際的にも競争力のある風力発電施設や太陽光発電施設を、
製造する技術力と産業基盤を既に有している。
しかも、AIIBはアジア諸国を中心に多くの加盟国を有しており、
AIIBを活用して中国主導で、
アジア諸国への環境関連投資を促進していくこともできるのではないか。

日本はどうであろう?
日本において環境・エネルギー政策を考える際の基本は、
環境・エネルギー産業を振興する視点(縦軸)と、
日本の製造業に安価で安定した電力を供給する視点(横軸)であると聞いた。
この二つの視点は重要であるが、ともすると、相反する方向性を持った軸のようにも思える。
この両面に配慮した政策を行った場合、
日本の環境・エネルギー産業の国際競争力を中国以上に高めることはできるのだろうか。

つい数年前まで、中国のPM2.5が大きくニュースで取り上げられていた。
北京政府の動きは早く工場等から排出される汚染物質に対する
規制と罰則を即座に定めるとともに、
首長の業績を評価する項目に環境を明確に位置づけ、かつ、環境の取り組みが悪ければ、
他の項目でどれだけ業績を上げていても罰するという思い切った政策を打ち出した。
中国においては、法の執行に課題があるという声もあるが、
上記のような中央政府の姿勢、既に世界第2位の環境産業輸出額を誇っていること、
AIIBなど自国の環境関連技術の輸出促進にも活用可能な基金を有することなど、
現実を直視すれば、日本は世界における環境政策の競争において、
既に中国の後塵を拝しているのではないか。

対立軸を乗り越えるためには、トップダウンの強い意思も必要なのではないか。
環境政策の国際競争において、日本は中国に遅れをとっているという危機感を持って、
今後の政策を考えていきたい。
また、中国をライバルと捉えつつも、
環境分野で日中そして韓国が連携できるような枠組を考えてみたい。

(更にいうと、ソウル大で会った中国のクラスメートは環境政策の博士号を取得するために、
ハーバードに進学した。自分の周りで、環境政策の博士号をとるために、ハーバードに進学したのは、その中国人の学生だけである。環境政策関連人材の層の厚さという観点でも、
日本は中国に遅れをとりつつあるのではないか。)

パリ協定で動き出す再エネ大再編
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%91%E3%83%AA%E5%8D%94%E5%AE%9A%E3%81%A7%E5%8B%95%E3%81%8D%E5%87%BA%E3%81%99%E5%86%8D%E3%82%A8%E3%83%8D%E5%A4%A7%E5%86%8D%E7%B7%A8-%E4%B8%96%E7%95%8C3%E5%A4%A7%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%A7%E4%BC%B8%E3%81%B3%E3%82%8B%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E3%82%92%E8%A6%8B%E6%A5%B5%E3%82%81%E3%82%8D-B-T%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E4%BA%95%E7%86%8A-%E5%9D%87/dp/4526076953

接続性の地政学
https://www.amazon.co.jp/dp/4562053720