2019年8月28日水曜日

ベトナムと韓国

夏季休暇を利用してベトナムに行ったら、
韓国の人々の多さに驚いた。
日本語版のメニューがないレストランでも、
韓国版のメニューなら置いてある。
直行便も、日本より遥かに多い。

韓越FTAの影響もあるように思うが、
韓国とベトナムは、特に対中国という観点から、
地政学的な位置が似ていると思う。

例えば、両国は中国から支配を受けた歴史があり、
現在においても領土問題を抱えていたりする。
南北が統一された暁には、新たな国家も中国と国境を接するようになる。
この点で、ベトナムと中国の関係を見ておくことは、
例えば高麗連邦のような新国家が出来た際に、
その国家がどのような動き方をするかの、一つの参考になるのではないかと思う。

近年、韓国では対中シフトを加速化させようとする動きが相次いでいる。
GSOMIA破棄までの一連の流れを見ていると、
ムン政権は鼻から対中シフトを加速化させる目的で、
最高裁長官を変え、徴用工判決に不作為を貫き、
レーダー照射や不買運動を通して、
日本のせいだと言いながら日米同盟関係からの離脱を進めてきたようにも見える。

この流れで行くと、
現在凍結されている在韓日本企業の資産が競売にかけられるのも時間の問題で、
かつ、それに対して日本が例えば関税引き上げ等の対抗措置をとって、
今でも十分に厳しい韓国経済が打撃を受けた場合、
中国から何らかの経済支援を得るという取り決めを、
実は結んでいたりするのではないかと勘繰りたくもなる。

韓国では、賃金引上げ、労働時間の短縮をムン政権下で急速に進めた結果、
以前から深刻であった若年雇用問題が更に深刻になっている。
また、韓国では、ドイツ国債に関連したデリバティブが、
大きな損失を出したのではないかとのことで、政府の査察が始まったという。

韓国の不動産に関しては、例えば2年間契約の物件で、
契約はじめに敷金のような形で2000万円払えば、
月々の家賃は払わなくても、退去する際にその2000万円が戻ってくる、
チョンセという仕組みがある。
これは結構人気で、例えば新卒の社会人や若い夫婦なんかも、
銀行から借り入れを行なってチョンセを活用するのが一般的なようだ。

この仕組みは、土地が値上がりして行くことを前提に、
不動産のオーナーが受け取ったチョンセを土地への投資等に活用して、
二年後はそれを転売等してチョンセ返却後の差益をとることを前提にした仕組みだと思うが、
一旦土地の値段が下がりだすと、
銀行への借り入れを返せない人が続出する危険性もあるのではないかと思う。

先程のデリバティブの損失で銀行のバランスシートが毀損した結果、
銀行のオーナーに対する借入金返却の督促が強まったのか、
最近は、以前は容易に出来たチョンセの更新も、再度まとまった額のお金を払うよう、
大家が賃借人に求めるケースも出てきているようだ。

日本としては、遠からず韓国が懲用工判決で凍結した日本企業の資産を、
現金化することに備えつつ、仮に現金化されそうになった場合も、
韓国政府が日韓請求権協定に則り、
日本企業に代位して損害賠償の支払いを行うよう求めたり、
既に韓国内で提起されている同様の訴訟への期待を表明するなどすることで、
懲罰的関税の引き上げといった対抗措置の実施は、
少し様子を見つつカードとしてとっておくというスタンスで良いのではないかと、
個人的には思う。

なぜなら、そのカードがトドメとなって韓国経済が深刻な打撃を受け、
それを例えば中国が現在韓国に対して課している、経済措置の解除などを通して、
救済するなどすれば、韓国の離日・対中シフトが益々加速してしまうと思うからだ。
ただでさえ、ぐらついている韓国経済をつついて、
日本のせいだと批判する口実を与えないようにして行くという配慮が重要だと思う。

話を冒頭に戻すと、現在のベトナムが中国にべったりかというと、
必ずしもそうでないし、
中国と連合を組んで例えば、マレーシアを圧迫するといった行動はとっていないと思う。

また、歴史的に見ても、大陸勢力が日本に侵攻してきたのは、
元寇の時くらいで、しかもそれは漢民族主導ではなかったのではないかとも思う。
日本と中国大陸の歴史を見ると、どちらかと言えば、大陸勢力の膨張を恐れた日本が、
先制攻撃的に出兵して反撃にあったケースが多いのではないかと思う。
かつ、この場合も、
大陸勢力がその後海を越えて日本を圧迫しに来たという事態には繋がっていない。
(白村江の戦い、文禄・慶長の役、日清戦争、(朝鮮戦争))

なので、仮に朝鮮半島が統一されても、
既存の漫画のストーリーに沿って、”民族の核”が日本を向くようなるといったことを、
過度に恐れて行くべきではないと思う。

むしろ、南北統一を経ていない現在においても、日本は核保有国に囲まれており、
そのミサイルの射程は日本を捉えているので、
南北統一が殊更ネガティブなファクターになる訳ではないのではないか。
(例えば、民主国家同士は戦わないという理論もあったりするので、
統一朝鮮が、民主制を維持した場合、朝鮮半島が日本に加える安全保障上の圧迫は、
今より減少すると見ても良いのではないだろうか。)

勿論、過去のパターンが将来も繰り返されるという保証はないけれど、
少なくも過去の歴史と、ベトナムなど、地政学的に韓国と類似性のある国が、
周辺国に対してとっている外交政策をみると、統一朝鮮が日本に対して、
敵対的な立場をとる、という言説とは、
異なるシナリオを考えて行くこともできると思う。

韓国ではアン氏や、チョ氏など、
大統領候補と言われて来た人にスキャンダルがあった結果、
次期大統領候補としては、ムン大統領とも対日の歴史問題などで立場の近い、
弁護士出身のパク・ソウル市長が有力なのではないかと思う。

パク市長が次の大統領となった場合、
現在の韓国政府の日本政府への立場は基本的に変わらないようにも思うが、
日本としては、引き続き、
徴用工判決が信義則を理由として時効主張を排斥していることを、
批判したりすることで、戦略的に対応を続けて行くことが重要なのではないかと思う。
(個人的には、ムン大統領が秘書官を務めていた盧武鉉大統領時代にも、
徴用工問題は提起可能であったはずなので、
信義則を理由に時効の主張を排斥するという、
韓国最高裁の主張は、かなり無理筋で、
もっと批判されても良いのではないかと思う。)

以上、安全保障は門外漢ではあるが、
日韓関係に対する前向きな政策を記述した本も出版されることに期待しつつ、
2020年4月の地方統一選挙の結果を注視していきたい。