2013年5月14日火曜日

憲法改正について考える

◆総論
全面的に変えるべきだとは思わない。
変えるなら、部分的に変える。
変えるとしても、政府運営の効率化や、
国民の自由の拡大の観点からの改憲がなされることに期待。

近年国民の改憲意識が高まっているというが、
その主な理由は、「決められない政治」批判に代表される、
政府運営の効率化に対する人々の期待が高まっているからだと思う。
改憲に賛成する中の多くの人々が望むのは、抜本的な憲法や国柄の改革ではなく、
統治制度の改善なのではないか。

◆変えるところ
◇政府運営の効率化に関連して(まずはここを改正すべきだと思います。)
・参議院の権限縮小(一番優先順位が高いところではないでしょうか。)
⇒衆議院の法案再議決要件を過半数+αに緩和。
(過半数としてしまうのは再議決制度の趣旨から行きすぎだと思います。)
⇒合わせて立法レベルで参議院議員定数、参議院議員歳費を削減し、地方自治体との首長との兼任規制を撤廃する。
・前年度予算踏襲に関する条項の復活見直し
⇒予算審議拒否をてこに政権を解散に追い込むなどの政治手法は看過されるべきでない。
⇒大日本帝国憲法71条を参考に、予算が決まらない場合の緊急措置を強化すべき。
・抽象的違憲審査制の導入(上記二つに比して優先順位は下がるところだと思います。)
⇒人権や法の支配の観点から、時の政権による無茶な立法や不適切な行政は裁判所からの牽制を受けるべき。

◇国民の自由の拡大に関連して(ここは個人の考え方に関わり、熟議が必要だと思います。)
・地方分権(道州制の実現)に関連して条約に関する条項(7、73条)を改正し、地方自治体にもある程度条約締結権を認める。
⇒FTAなどは日本全国単位で締結・合意形成を目指さず、例えば九州道のみ先行して中国や韓国とFTAを締結する等があってもよいのではないか。

◆変えないところ
12、13、97条など国民の自由に関する条文は堅持。
新しい人権などは、憲法レベルで盛り込むのではなく、立法で対応。生存権等しかり。
外国人の地方参政権は各地方自治体の政策に任せる。

最近話題の96条は、これを変えるべきでないと思う。
この要件が重いから憲法が変わらないというのは、
同程度に改正要件が重いドイツで多数の改憲がなされているため妥当でない。
全国民の代表たる国会議員の熟議の末に形成されたコンセンサスを持って、
憲法改正を発議するべきだ。
発議要件をゆるめると、多数派の価値観が憲法に反映されやすくなり、
少数派の権利も一定程度保持しようとする憲法の価値の根本が毀損されるのではないか。

◆9条
◇総論
・9条が日本の防衛予算の拡充に歯止めをかけ、専守防衛という日本の防衛上の立場を確立してきたことに一定の評価
・国際情勢(テロとの戦い、東アジア情勢)を踏まえ防衛力の強化や同盟国との協力強化も一定程度必要
・9条は変えず、解釈変更や立法で国際・社会情勢に最大限対応することを目指す。

◇現在の9条運用
・PKOなどは現在でも行われている。
・自衛権自体は解釈で認められている。

◇改憲ではなく、それ以外の立法等で対応できるのではないかと思われる事項
・アメリカ艦船が攻撃された場合の自衛隊の集団的自衛権行使
⇒日本周辺海域でアメリカ艦船が攻撃された場合のみ、日本艦船への攻撃と同視して自衛権を行使するということを立法レベルで認められないか。
・自衛隊の武器行使要件の緩和
⇒PKOなどで活躍する自衛隊の緊急事態の武器行使はできるだけ認めるべき。しかし、一定の歯止めもつける。
(※日本国ならではの国際紛争や国際社会の秩序維持への関わり方を今後とも追求していくべきだと思います。)

◇変えないメリット
・今後とも防衛予算の拡充に一定の歯止めをかける
・周辺諸国に対して、対抗よりも協力を推進するという姿勢を示す
・日本の軍事力の展開戦域を日本国の周辺に限定して判断する姿勢を示す

◆現行の一部の改憲論について思うところ
①変わらなかったから変えるという趣旨には賛同しない。
変わらないというのはそれだけ国民の支持を得てきたということ。
現行憲法で日本は奇跡と言える戦後復興を達成している。
評価すべきは評価すべきであり、全否定する必要はない。
変わらない憲法こそ私達の祖先の先見性と卓見に対する敬意の証であり、
私達の誇りとなすべきことではないか。

②米国におしつけられたから変えるという趣旨にも賛同しない。
憲法の内容自体に問題があれば部分的に改正すべきだと思うが、
誰が書こうと国民の賛同があり、日本の国益に叶った憲法であれば堅持すべき。
誰が書いたかは、改憲の理由にならない。
それに現行憲法の起案には当然私達の先代も携わっている。

③現行憲法が公布されて60年たったから改憲するという趣旨にも賛同しない。
時代の変遷には憲法以外の立法・法改正や解釈変更で対応するのが基本。
本当に時代にそぐわなくなったと考える条文は条項ごとに改正すべき。
また、60年たったから抜本的に改憲すべきと言うなら、60年ごとに憲法の大改正を行うのか。
日本は天皇制の継続に見るように、継続に価値を置く国。
憲法についても、継続性に意義を見出す議論があってよいのではないか。

④他国が憲法を変えているから変えるべきとの趣旨にも賛同しない。
他国が憲法を変えていること自体は、日本が憲法を変える理由にはならない。
自分達が国際・社会情勢を判断して、自分たちの決断によって憲法は変えるべき。
日本はこの人口規模にして、戦後の焼野原から世界で有数の経済大国にのし上がった国。
もっと自分の国の歴史と自分たち自身に誇りを持って、憲法改正も議論していいと思う。

国の在り方を決める憲法、自分の頭で考えながら改憲を議論していきましょう!

◆参考
(寄稿 憲法はいま)96条改正という「革命」 憲法学者・石川健治

※日本とシンガポールの「自由」比較・中国流自由観
 中国人の友達から日本とシンガポールの自由を比較する論文を読んだことがあると聞いた。民主主義ではあるが経済的規制の多い日本と民主主義ではないが経済的規制の少ないシンガポール。民主主義を制限することで最大多数の国民に最大限の自由を与えようとする中国流の自由観があると。個人的には、上の主張は司法権の立法権・行政権の牽制により実現されるべきだと思う。同時に、他国の憲法や政治思想を比較することは自国の憲法を考える上で一つの視点になると感じた。
 ちなみに、韓国では学生や法曹を中心とする政治運動が盛んで、この点では日本以上に民主主義の力がある国だと思う。
※政教分離に関連して
 議員が宗教法人である靖国神社に参拝している現状は法的に問題があると思います。また、A級戦犯の合祀に関する外交問題、自分たちの家族を合祀するのをやめて欲しいと考える日本の人々にどう応えるかという国内問題などもあります。これらに加え、日本のために戦った人々に正当な評価が払われるべきだという要請にも配慮してどのような政策をとる必要があるかを考えるべきです。
 一つの視点となるのは、兵士の鎮魂の場と、神道の宗教の場とを切り分けて議論することを可能とする政策を考えることではないでしょうか。靖国神社に関しては、立法レベルで改正し、兵士の鎮魂の場所と宗教は切り分けて議論できるようにすべきだと思います。靖国神社の施設の管理・運営・宗教行為の執行自体は宗教法人である靖国神社に任せ、国が靖国神社の記念館の掲示物の内容や、祀られている兵士の名簿を管理するようにするのはどうでしょうか。また、名簿からの氏名削除を求める方々の声にも応えること、加えて、A級戦犯氏名の名簿からの削除等も検討されるべきだと思います。
※解釈改憲について
 行政において法律を解釈すること、そして、行政全体の解釈が憲法などに抵触しないかを判断する内閣法制局の役割は重要だと思います。ただ、内閣法制局や閣議決定により示された憲法解釈が憲法の解釈の限界を超えていると考えられる時、その違憲無効を判断する権限が現在の最高裁にあるのかが気になります。もし、具体的審査制等がネックになってないとするのであれば、法律の最終的な解釈権限は裁判所にあるという三権分立の趣旨を滅却するものであり、妥当でないと思います。

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