2013年5月21日火曜日

従軍慰安婦問題について考える

◆はじめに
 ソウル大学の授業で習ったことを参考に、従軍慰安婦問題に対して日本国内で行われている議論を考えてみたい。

◆問題の大局
 海外に出てみると、僕も含め、多くの日本人の強みは細部をしっかりとつめるところにあると思う。逆に言えば、大局的な観点から問題の根幹を見極めることは、韓国や中国の学生の方が長けていると感じるときがある。日本人には細部が目につきすぎるせいか、時に大局を見失いかねない弱点があるのかもしれない。

 従軍慰安婦問題に関する一部の議論についても同様の懸念を感じるときがある。この問題の本質として、最も重要かつ大きな部分を占めるのは、元慰安婦の方々が慰安所で体験されたことだ。ここで彼女たちは、帰ることも、「慰安」の拒否が受け入れられることもなく、1日に10人から20人の相手との性行為を、数年間にわたって続けなければならなかった。従軍慰安婦問題の内外の議論に関しても、この点を否定するものはほとんどない。

 では、最近メディアを賑わせている「狭義の強制性」という議論はどういうものか。これはさらに、募集期の強制性と移送期の強制性にわけられるのだが、僕も含め一部の日本人が気になるのは、募集期の強制性である。主張を要約すると、「全ての元慰安婦の方々を日本軍が強制連行したわけではない」ということだ。
 元慰安婦の方々の証言や元兵士の証言等を総合すると、元慰安婦の方々の募集経路は①強制連行(特に東南アジアや中国)②軍服工場で働く等、良い仕事があると騙された③経済的理由等から不本意ながら志願した、などがある。正確な数字や割合は明らかになっていないが、元従軍慰安婦の方の証言や兵士の証言から考えるに、この中で最も多いのが②、次に多いのが①、そして残りが③と思われる。
 国際社会では、ほとんどの元従軍慰安婦の方が①強制連行によって「募集」されたと認識されているように思われる。これに対し日本人として、「それは違うのでは?大半は軍による強制連行でなく、②軍の委託を受けた民間業者による騙取では?」と訴えたくなるむきがあるということについては否定しない。

 ただ、狭義の強制性の問題は全体の問題状況から見ると枝葉の論点であるということが意識されるべきだ。また、騙取であっても大きな意味での強制性の範疇を出るものでないということも重要である。

◆解決がいそがれるべき課題
 戦後、日本はこれらの元従軍慰安婦の方々に対し、アジア女性基金の活動を通して、首相からの謝意を伝える手紙の受け渡しや人道的観点からの償い金の受け渡しを行った。東南アジア、台湾、オランダ等ではこれらの事業は一定の成果をあげたようである。
 ただ、外国人の元従軍慰安婦の方々の中で最も大きな割合を占めていたはずの韓国においては、アジア女性基金の活動はごく一部でしか受け入れられなかった。

 韓国側が問題としたのは、①手紙ではなく、謝罪決議や談話等の公式の謝罪を求める。②政府と民間共同出資の人道的賠償でなく、全額政府出資の法的賠償を求める。の主に二点である。
 現在存命の韓国人の元従軍慰安婦の方は65名ほどいるとのことだ。狭義の強制性や法的/人道的賠償の議論を超えて、彼女たちが存命している間に何ができるかという議論がなされるべき時ではないだろうか。

 政治的に難しいのかもしれないが、国会での謝罪決議や首相による新たな談話の発表とアジア女性基金のような形での人道的賠償の再開は日本が最大限取りうる譲歩の形であると思う。韓国の多くの方々にもこの点を理解してもらい、日本の保守層にも我々が問題としているのは全体の問題状況からみてどれ程重要な問題なのかを理解してもらいたい。その上で、請求権条項など、日韓両国で問題となる条項を回避しながら双方にとって納得のいく妥結案を実行できるよう願いたい。そして、そのことが東アジアの未来と日本の未来を考えた上で、愛国者がとるべき日本の針路であると僕は思う。

◆参考
 アジア女性基金のウェブサイト

◆キャンパスアジア雑感
今日、中国のキャンパスアジアのメンバー全員を、
韓国人のキャンパスアジアメンバーお勧めの店に案内した。
半ば酔いながらも、中国の教育を論じ、中国の更なる発展を論じる彼らに、僕は好感を持った。

一人で靖国を参拝する日本のロジックを説き、中国人5人を飲みにつれて行った僕が思ったのは、
やはり東アジアの平和を守るべきだということである。

力の支えなくして、もちろん強国と対等な立場で日本の平和を守ることはできない。
しかし、貞観政要によると、軍事力の最も重要なポイントは抑止力であって行使ではない。

日本も、制宙権、制空権、制海権等の抑止力拡充に力を注ぎつつも、
その力の拡大に抑制を加え、その行使を最大限管理して、主に外交により問題の解決を図る。
これが、日本が目指すべき防衛外交政策であると思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿